ドイツ連邦議会選挙の結果

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年10月

9月18日に実施されたドイツ連邦議会選挙は、事前に4割程度の得票が見込まれていたCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)が、前回(2002年)をも3.3%下回る35.2%の得票率にとどまる予想外の結果に終わった。比較第一党にはなったものの、かねてから退潮傾向が鮮明だった与党SPD(社会民主党、得票率34.3%)をわずか3議席上回ったに過ぎない。選挙後各陣営は新政権づくりのため連立交渉に入ったが、明確な「勝者」がないまま協議は難航している。1998年から7年間続いてきたSPDと緑の党の連立政権に対し、野党CDU/CSUとFDP(自由民主党)は両者で過半数獲得を目指したが、目標を大きく下回った。労働に関する諸規制の緩和を主張していたCDU/CSUが伸び悩んだことに対して、労働側は「有権者は明らかに、有権者の利益に反するいかなる政策も望まないことを示した」(ゾマーDGB=ドイツ労働総同盟会長)などと、選挙結果に一定の評価を示している。

選挙結果および議席配分は、候補者の死去により選挙実施が10月2日に繰り延べになったドレスデンⅠ地区の結果により確定するが、大勢には大きく影響しないと見られている(注1)。9月18日選挙の結果は、得票率順に、CDU/CSU35.2%(225議席)、SPD34.3%((222議席)、FDP9.8%(61議席)、左派連合8.7%(54議席)、緑の党8.1%(51議席)。02年の前回総選挙と比べると、CDU/CSUがマイナス3.3%、SPDマイナス4.2%、FDPプラス2.4%、緑の党マイナス0.5%で、東独地域中心のPDS(民主社会党)と旧SPD左派勢力で構成する左派連合は、02年当時のPDSが獲得した4%の得票に4.7%を上乗せした。

労働市場改革の実施にもかかわらず改善しない雇用情勢などを背景に、SPDはもともと大幅な退潮が予想されていた。これに対し、CDU/CSUは当初政策パートナーのFDPを加えて過半数を制する勢いを示していたが、その後やや勢いが弱まり過半数獲得は「微妙」と見られるようになった。それでも選挙直前のARD(第1公共放送)、ZDF(ドイツ第2テレビ)、調査会社Forsaなどの世論調査では、CDU/CSUに41~42%の得票率が予想されていたが、結果はそれを大きく下回ることになった。この原因としては、首相候補のメルケルCDU党首が個人としてはシュレーダー首相に対する支持を下回っていた(各種世論調査で「首相にふさわしい人物」としてはシュレーダー首相がリードしており、選挙前のテレビ討論でも同氏の評価が高かった)ほか、CDU/CSUが財務相候補としたキルヒホーフ元連邦憲法裁判所判事が所得税率の所得レベルにとらわれないフラット化を主張し反発を招いたことなどが指摘されている。

選挙結果を受けて各党の連立協議が始まったが、9月末時点では、新政権樹立へ向けての具体的な合意は得られていない。組み合わせとして、CDU/CSUとSPDの二大政党が政権を担う「大連立」、SPDと緑の党のこれまでの与党にFDPを加えた「信号連立」(各党のイメージカラーを組み合わせた呼称)、CDU/CSUとFDPの組み合わせに緑の党を加えた「ジャマイカ連立」(各党のイメージカラーがジャマイカ国旗を構成する色と同じ)などが検討されたが、FDPはSPD、緑の党はCDU/CSUの政策と大きな隔たりがあり、歩み寄りは困難な情勢だ。世論では大連立への支持が多く、シュレーダー首相の続投を求めるSPDとメルケル氏を首班とする政権を主張するCDU/CSUは、9月28日までに2回の協議を重ねており、さらに協議を続ける予定だ。

DGBは機関紙で、勝敗のはっきりしなかった今回の選挙結果について「労働組合はそれでもポジティブに評価している」としている。この中でゾマー会長は、有権者は「黒-黄連合(CDU/CSUとFDPを示す)が計画した労働協約自治への介入、解雇保護法の緩和や企業別労働条件決定の拡大などに明白な拒絶を示した」と述べている。

IGメタルも機関紙で同様の見解を示し、さらにこれまでシュレーダー政権が進めてきた労働市場改革(ハルツ改革)および総合的な改革プログラム(アジェンダ2010)についても、失業問題など「根本的な問題を解決していない」と批判している。

一方経営側からは、構造改革促進を求めて連立協議の行方を注目する発言が出ている。BDA(ドイツ使用者連盟)のゲーナー事務局長はテレビ番組で「新政権の組み立てがたいへん困難な状況だ」と述べたうえで、「われわれが下り坂にとどまらず職場の喪失を続けないために、誰が成長のための構造改革を担い必要な制度変革をもたらすのかが問題になる」と指摘している。

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