失業率は9.9%に低下しても、「就労を社会政策の中心におく」政府の方針は堅持

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年10月

2005年7月の失業率が、21カ月ぶりに10%をきったフランス。就任以来、「雇用への闘い」に力を注いできたドビルパン首相は、9月の定例記者会見で「雇用政策の成果」を強調する一方で、今後も引き続き、「就労を社会政策の中心におく」ことを明らかにした。

2005年6月2日、「100日以内に再び国民の信頼を得る」ことを目指し、ドビルパン内閣はスタートを切った。その100日を目前にした8月31日、INSEE(国立統計研究所)が7月の失業率を発表。2003年10月以来21カ月ぶりの1ケタ台となる、9.9%(ILO基準、季節調整済み)を記録した。失業者数は、2005年6月に比べて3万人減の271万8000人。これは、2001年1月以降で、最大の減少幅となる。

この結果を受け、ドビルパン首相は、定例記者会見(2005年9月1日)で、「雇用のための緊急計画」(注1)で掲げた諸制度の迅速な実行等、就任以来力を注いできた雇用政策の成果が、「失業率の低下」となって現れたと述べた。具体的には、(1)新しいタイプの「期間の定めのない雇用契約」(CDI)を前倒しで8月4日から実施(注2)、(2)零細企業(従業員数20人未満)のための「雇用チケット」の導入、(3)1年以上失業している長期失業者が職をみつけた場合を対象とした1000ユーロの手当支給――等を挙げ、(2)と(3)については、9月2日から実施するとした。

また、同首相は、9月からの3カ月における政府の方針として、「社会政策の中心に就労をおく」ことを明言。その柱となるのは、「労働の価値付け」と「責任」の2つであると述べた。「労働の価値付け」とは、「フランスにおいて、扶助所得で生きていくことよりも、働くことの方が、より魅力的でかつ容易なこと」を意味するとしている。同首相は、「低所得に対する真の所得拡充」の実践を宣言。「SMIC(最低賃金)の水準を、現在の500ユーロ強から、800ユーロとする」との計画を挙げた。これにより50%の所得増大が見込めると主張。さらに、「雇用のための緊急計画」で創設された「長期失業者が職をみつけた場合を対象とした1000ユーロの手当」は、月額150ユーロまで拡大、全ての社会的最低所得の受給者に拡張されるとした。このために必要な予算は、2006年及び2007年の2年間で、10億ユーロとなる。一方、「責任」については、「規則遵守義務の再確認」とし、特に、扶助所得を受けながら闇労働に従事している者への規制の強化と、これに違反した場合には従業員と雇用主の双方へ制裁措置がとられるとした。

さらに、同首相は、この「社会政策の中心に就労をおく」以外にも、「購買力の改善」「住宅へのアクセス(注3)」「エネルギーの節約」、そして「税制の大改革」が、ここ数カ月における政府のとるべき行動の柱になると述べた。特に、(1)所得税の累進税率を現行の7段階から5段階程度に簡素化することによる実質的な減税(2007年度に実現)、(2)従業員持ち株制度の奨励、(3)産業別賃金交渉の活性化――等が、購買力の改善につながると主張した。

こうした流れの中、INSEEは9月30日に、8月の失業率は7月から横ばいの9.9%(ILO基準。季節調整済み)と発表した。ドビルパン首相は、2カ月続いて失業率が10%を切ったことに対し、改めて「雇用政策の成果である」と喜びをあらわにしている。

失業率は、このまま低下し続けるのか。そして、ドビルパン首相が目指す「雇用への闘い」への勝利は、フランスを「強い国」へ導き、国民の信頼を再び得ることができるのか。雇用政策を柱とする新内閣への評価は、もう少し時間が必要といえそうだ。

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