英国内務省、移民受入制度の見直案を発表

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  • 国別労働トピック:2005年10月

2005年7月19日、英国内務省は移民受入制度の整理・統合を内容とする見直し案(注1)を発表した。同案は2月に「入国管理五カ年計画」で打ち出された方針を踏襲したもので、制度の単純化やポイント制の導入などが特徴。パブリック・コメントの締め切りは11月7日で、寄せられた意見を踏まえて草案が策定される。

見直し案の主な内容とその背景

現在は移民受入制度として、労働許可を必要とするルート、必要としないルート、高度技能移民プログラムといった個別プログラムなど約110のルートが存在する。これに滞在期間の延長、他ルートへの切り替え、国内からの申請などを加えるとその数は200ルートにものぼる。これをさらに分かりにくくしているのが相次ぐ制度の改編で、その結果制度そのものが極度に複雑化している。

内務省は、見直し案で受入制度を(1)高度技能人材(2)技能労働者(3)低技能労働者(4)学生(5)その他、の5種類に整理・統合することや、オーストラリアなどで行われているポイント制の全面導入などを提案しており、見直しによって受入基準の透明性が高まるほか、移民受入に関する理解向上やコスト削減が可能になるとしている。

現行の移民受入制度の概要

(1)労働許可(Work Permit)を必要とするルート

現行の労働許可は、1)一般、2)研修・実務経験、3)芸能・スポーツ、4)インターンシップ、5)サービスの貿易に関する一般協定(GATS)に区分されており、発行の際には、技能の有無と「英国内の労働者では代替できないポスト」であることの証明が必要とされる。

(2)労働許可を必要としないルート

労働許可がなくても、就労に関連して英国に入国可能なルートが約40ある。主要なものとしては、経営者、ワーキングホリデーの利用者、オペア(住み込み家事手伝い)、留学生など。このほか、英日青少年交流制度(Japan Youth Exchange Scheme)など、非常に小規模なルートも含まれる。許可の期間は最長5年までで、4年後に定住の資格を得ることができる。

(3)高度技能者移住プログラム(Highly Skilled Migrant Programme : HSMP)

大卒者、医師・獣医師資格取得者、金融専門家など、高度な技能を有する者が就労や開業の機会を求めて英国に移住するのを許可するプログラム。国内の求人なしに移住が可能、レーバーテストの対象外という点で労働許可とは異なる。学歴、職歴、過去の収入、就労希望分野での業績、夫、妻もしくは未婚同居相手の業績などの項目から成るポイント制が導入されている点が特徴。一年の経済活動の後には在留期間の延長が認められ、連続4年間在住の後は永住許可の申請が認められる。

(4)季節農業・酪農労働者制度(SAWS : Seasonal Agricultural Workers’Scheme)

農民や飼育者として季節農業労働に従事するために、欧州経済地域(EEA)外に居住する18才以上の全日制の学生を労働者として入国することを許可する人数割当制スキーム。(注2)スキームは、内務省からの委託をうけたオペレーターによって運営される。労働者は派遣先の農場でのみ働くことが認められており、一度につき最短で5週間、最長で6カ月間の英国在留が認められるが、在留許可期間が終了次第、出国しなければならない。

(5)職種別スキーム(SBS : Sectors Based Scheme)

EEA外の労働者が低熟練の仕事に就く目的で英国に入国することを許可するスキーム。SAWSと同様、数量割当制がとられている。短期の労働力不足への対応が目的とされており、滞在は1年以内、対象業種は低熟練労働に限定されている。

導入当初は、サービス業(ホテル業・飲食業)と食品製造業(食肉・水産物加工業・キノコ栽培業のみ)の2業種で受入が行われたが、現在EUの拡大に伴い低熟練労働の職種は新規加盟した東欧諸国からの労働者によって労働需要を満たされたとして、サービス業における割当は中止されている。食品加工業の割当は2006年まで3500カ所で試験的に継続される予定。

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