中国のおける若年失業とパラサイト族

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2005年10月

中国労働社会保障部は、8月に2005年上期の全国都市部における就業と再就業の情勢報告を発表した。それによると、都市部では595万人が新たに就職、国有企業などのリストラ労働者である下崗失業者についても258万人が就業を実現している。その中でも特に、時代ニーズにあった技能を身につけていないため再就職が特に困難といわれている「4050」世代においても66万人が再就職を実現するなど年度目標を順調に達成している。また、6月末時点の全国都市失業者数は832万人、登録失業率は4.2%で昨年と同水準である。

このように順調に労働市場政策を実現する中国であるが、ここ数年、若者の失業問題が深刻化の傾向にある。今年5月に全国青年連合会と労働社会保障部労働科学研究所が共同で実施した「中国第1回青年就業状況調査報告」によると、15歳から29歳まで若者の失業率は9%で、都市部平均失業率を大きく上回っている。2002年以来若者が失業者に占める割合は、国有企業離職者が5.8%であるのに対して、18.8%を占めるなどゆっくりと上昇しており、20歳代、30歳代の若者の就職問題は社会問題となりつつある。その原因には、増加する大学卒業者など高学歴、高技能者の労働市場の需給ミスマッチによる就職難という問題に加え、「傍老族」の存在が指摘される。

「傍老族」とは、成人していて、生活する能力はあるのにいつまでも親のそばにいて乳離れできないグループ、いわゆる「パラサイト族」のことである。1970年代から80年代に生まれ、ほとんどが一人っ子か末っ子で父母に過保護に育てられた者たちである。高学歴であるが、試験対応型の教育モデルの下で成長したため職業技能を特にもたない。自分に何ができるのか、何をしたいのか明確な目的を持たない若者のグループであることが社会科学院の研究調査などから指摘されている。このグループは、働かなくても両親が比較的裕福で基本的生活を支えるだけの力があるため、父母の庇護の下に居続けるのである。中国では他にも、定職に就かない若者に、仕事をしていないのに自家用車を運転し、いくつもの家に住む新「貴族」ともいえる「瓦のかけらを食べている」(吃瓦片)者たちとよばれる若者の存在や、父母のそばで経済的栄養を享受する、いわば「薬を飲んで暮らす」(吃葯片)と形容される若者の存在がある。また、親がそれほど裕福でない、専門学校卒の若者の中にも、自分の故郷や就職口のある小さな都市や町に暮らすことを好まず、大中都市を「漂流」する者が増えている。

かつて中国の新卒市場では、一定の学歴があれば採用が容易であった。ところが現在では、市場競争が激化し、技能や関連する職務経験を募集の必要条件として重視する企業が増えている。若者に仕事がないのは、学歴の高い者ほど就職に高い期待を抱き、彼らが満足できる仕事をみつけることができないからである。生活上の圧力がない限り、安易に就職せず、理想の仕事に就くため、研修を受け、技能を高めたいと考えている。

中国においても、経済が発展し、生活が豊かになったことで、パラサイト、フリーター、ニートといった、日本と同様の若者をめぐる問題が大都市を中心に顕在化している。

中国の労働市場政策は、持続的発展のため、従来の「4050」世代の問題に加え、将来を支える「2030」世代を対象とした教育、職業訓練、職業需給制度の見直し等若年雇用者を適切な職業選択に導くため、次世代育成支援へ向けた検討が求められている。

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