行政改革と労働分野の組織再編の動き

カテゴリー:雇用・失業問題非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2005年1月

台湾与党の民進党は、行政院(内閣)構造改革に関する一括法案を採択し、13の部会と閣僚レベルの四委員会を含む部会の合理化と新たな管理体制の確立に取り組むことを決定した。今後の流れとしては、立法院で3回に渡る審議での可決を経て、陳水偏総統が布告する「行政改革法」の草案を作成した後、2006年1月1日から新体制に移行することになる。

行政改革の動き

行政院の研究開発訓練委員会によれば、今回の行政改革の目的は、単に部会数を減らすことを目的とするものではない。グローバリゼーションによる社会経済の変化を背景として国民の真の要望に応じるため、中央政府の役割を閣僚レベルの委員会、審議会、局などで再構築することにある。調整の対象となる部会は、内政部、教育部、外交部、経済部、財政部、防衛部、交通部、法務部の8部会である。さらに、労働・人的資源部、保険・社会保障部、農業部、環境・資源部、文化観光部の5つの部会の新設が検討されている。新設される5部会については、閣僚レベルの委員会、審議会、局などに加え、現行部会所轄の部もしくは機関を含め、現行部会にある程度まで統合する方向がしめされている。

労働分野における具体的改革

新設される「労働・人的資源部会」では、労働に関する基本的権利と要望に対処する消極的な現在の行政院労工委員会の改善のみでなく、国際競争力の向上の視点から人的資源開発に力を入れた組織的な検討、計画、行動を任務とすることが強調されている。すなわち、今回の改革では、労働者の保護にとどまらず、人的資源開発や雇用機会の創出、生産性向上の視点から、技能に関する職業訓練開発、技術革新、チームワークの構築を重点的に積極的に促進することが求められている。

具体的には、失業率が上昇している場合、失業者に手当てを支給するという消極的政策にとどまらず、経済開発を積極的に進め、人的資源開発という観点から雇用機会を創出することを目指している。

改革の第一歩として、2004年9月に、行政院管轄の経済建設委員会(CEPD)は全国サービス産業協議会を開催し、2004年から2008年にかけて経済成長5%達成を目標に、サービス産業の業種別開発促進に戦略的に取り組むことを発表している。

CEPDの予測によると、サービス産業部門の年間生産高は、2003年度の約1900億米ドルから2008年には約2500億米ドルに達し、その対台湾GDP比率も63.5%から67%に上昇するとしている。CEPD は、高度成長性、国際競争力、技術革新、高付加価値の獲得と産業連携や安定した雇用を前提とした生産価値の創出能力を有する産業の育成など「戦略的サービス産業」の開発促進に政府が取り組む予定であると報告している。

戦略サービス産業の育成と労働者派遣業をめぐる法制化の動き

労働問題に関連する戦略的サービス産業には労働者派遣業も含まれる。近年、経済のグローバリゼーション、情報化、技術革新、産業構造の再構築が進む中にあって、弾力的な人的資源管理が企業経営における新たな流れとなっている。それに伴い、台湾では、業種と件数両面でのいわゆる「非定型採用」の増加という新たな流れが広がっている。労働者派遣業は、多数の業種を対象に積極的な求人活動を展開しており、学識経験者、政府職員、労働団体構成員、求職求人紹介業者の間で激しい論争が巻き起こった。そのような状況を受けて、労工処(CLA)は一連の会議、公聴会、協議会を開催し、労働者派遣法の草案まで作成するに至っている。しかし、新法を制定するか、労働基準法もしくは職業紹介サービス法の必要な改正を実施するかについては、学識経験者、雇用主、被雇用者の代表の間でまだ意見の一致が見られないのが現状である。

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