総選挙における連立与党の大勝が労使関係にもたらす影響

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年1月

2004年10月9日の連邦議会選挙でハワード首相率いる連立与党が再選を果たし上下両院で過半数を占めた。これまで連邦政府は労使関係改革法案を継続的に議会に提出してきたが、そのほとんどが実現されてこなかった。これは法案成立には上下両院を通過する必要があるが、労働者保護の立場を取る上院の少数政党との協議が難航しがちであったため。今回の連立与党の躍進により否決されてきた重要法案が通過する可能性が濃厚になってきた。

労使関係改革法案の主な内容と組合の反応

アンドリューズ職場関係相は、2005年3月までに労使関係改革関連法案の検討に入ると述べた。主な労使関係改革案は、1)不当解雇禁止法案の条項見直し、2)小企業の解雇手当支払い義務の免除、3)労組への加入・非加入の自由を保障する法律の強化、4)労働協約が有効な期間中の争議行動の違法化、の4項目。

現在、従業員には不公正に解雇された場合、雇用者を訴追できる権利があり、企業がこの条件に従わなければ、従業員には賠償金を受け復職の可能性もある。政府は解雇が妨げられることにより、特に中小企業における雇用が抑制されているとし、不当解雇禁止をやめれば8万人の雇用を創出、失業対策の一助となると主張している。政府はこの他にストライキ実施前に無記名投票の実施義務付け、ストライキ突入前に組合が義務付けられている72時間という通達期間の延長、組合の職場への「立入権」の制限などの改革案を打ち出し、 上院における多数支配の効力が発生する2005年7月5日以前に法案を通過させたい考え(注1)。

これに対し豪労働組合評議会(ACTU)は、交渉力をもたず、個人契約社員としての地位に甘んじなければならない低賃金労働者が増える「米国式」労働市場が確立されつつある中、新たな法律によって組織労働者が一層困難な状況に陥ると主張。労使関係改革に対して全面的に闘うと宣言、対抗手段として現行の労働協約(ABAs)条件拡大の採用を検討、製造業労働者組合(AMWU)、労働組合評議会理事も同調するものと考えられている。

テルストラ社の民営化の動き、大きく前進

労使関係改革法案に並ぶ重要案件として挙げられているのが、オーストラリア最大の情報通信サービス会社であるテルストラ社完全民営化の問題。政府保有の株式51%の分割売却の姿勢を見せたコステロ財務相の意見に対し、ミンチン予算相は一括売却されると述べる等、政府内の意志統一はなされていないものの、完全民営化法案が議会を通過するのは最速で2005年8月とされており、テルストラ社自身も来るべき民営化に対する備えとして小売および卸売り部門の別組織化等の事業改革を進めつつある。

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