新首相、新年度予算審議前に労働組合代表と初会談

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  • 国別労働トピック:2004年9月

2004年6月、インドの主要9労働組合の代表がマンモハン・シン首相と会談した。会談において組合が要求したのは、雇用の創出と国民本位の開発の2テーマ。いずれもインドの労働者階級にとって重要な問題と位置付けられている。同会談は、1カ月前の統一進歩連合(UPA)による新政権樹立後に初めて開催された会談の1つ。

AITUC(全インド労働組合会議)のグルダス代表は首相に対し、失業者増大という問題を解決するために、農業生産の増大、社会基盤の構築・拡充、灌漑施設の改善、中小企業の育成、発電所の新設を目標とした大規模な政府投資計画に着手するよう訴えたという。さらに、AITUCは、国民本位の開発政策によって雇用機会は一層増大するだろうと述べている。

INTUC(インド全国労働組合会議)のサンジバ代表は、「新首相は労働者階級の重要性を十分認識しているようだ」と評価した。また同代表は「首相は、未組織部門の労働者を対象とする就労保証計画(1カ月当たり15日から20日の就労確保を目標とする)を自ら検討することを約束した」と述べた。INTUCが今回の会談で訴えた主な問題の1つは会社法の改正である。INTUCは、「現在のような厳しい競争の環境下においては、労使間で密接な協力関係を確立する必要があると考えている。労働者も政府の政策決定プロセスに関与すべきであり、従業員と経営陣が新規発行株式の25%以上を保有するような形に会社法を改正する必要もある。労働者側の代表を取締役会に出席させることも必要」と述べている。

CITUのタパン・セン書記局長は、「首相は、コモン・ミニマム・プログラムを政府予算に確実に盛り込んで欲しいという労組側の要求に十分な理解を示してくれた」と語った。CITUは発言の中で、長年待ち望んでいた法的措置に関する最優先事項は、その基本原理を実行に移すことであると首相に訴えた。同労組の主な要求は、最低賃金を保証するとともに、膨大な数の農業労働者も社会的保護の対象に含めた包括的農業労働者法案、すべての主要労働組合で一致した意見を正式に盛り込んだ未組織部門労働者法案、最高裁判所が出した1997年8月以来の勧告と指針に基づき、女性労働者を職場におけるセクシャル・ハラスメントから保護することを内容とする法案を提出することであった。

BMSのギリッシュ・アワスティ副書記局長によると、主要労働組合の代表との初会談で、首相は誠実で友好的な姿勢を見せたという。同氏は、「首相は、予算審議が目前に迫っており、各案件を再検討する時間はほとんどない状況であることから、提起されたすべての案件を予算に盛り込むのは難しいという立場を表明した」と語った。

すべての労働組合は、公務員によるストライキを禁ずるという最高裁判所判決による悪影響と行き詰まりを解消するために、政府は効果的な対策を講じる必要があると訴えている。新政権が採択したコモン・ミニマム・プログラムは、法に従ってストライキを行なう権利を含む、労働者が獲得した権利と利益を剥奪もしくは縮小してはならない旨を明記している。

なお、会談に出席した労働組合代表は、ギリッシュ・アワスティ氏(BMS)、サンジバ・レディ氏(インド全国労働組合会議:INTUC)、グルダス・ダスグプタ氏(全インド労働組合会議:AITUC)、W・R・ヴァラダ・ラジャン氏(CITU)、ウムラオマル・プロヒット氏(インド労働者連盟:HMS)S・R・セングプタ氏(UTUC)、クリシュナ・チャクラボルティ氏(UTUC-LS)、デヴラジャン氏(TUCC)、ナレン・セン氏(NFITU)の各氏。

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