政府、公務員の大幅人員削減策を発表

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年9月

政府は2007~08年度の中期歳出計画で、公務員のポストを10万4000削減し、215億ポンドの経費節減を目指すことを発表した。削減は、強制解雇、希望退職及び早期退職を併用した形で行われる見込み。実現すれば公務部門ではここ数十年で最大規模の合理化再編となる。

削減対象となる職員は、公務員総数の18%に相当する8万4150人。実行されれば削減されるポストに所属する職員のうち7万0600人が失職し、残る職員も給付金取扱事務所などの窓口業務に配置転換される。さらに、政府機関で5000ポスト、地方自治体で約1万5000ポストの削減も実施するほか、2010年までにロンドンやイングランド南東部の公務員職2万ポストを地方へ移すほか、内国歳入庁と税関局の統合、後方業務から窓口業務への配置転換などが計画されている。

さらに、英国雇用年金省が、年金申請者の銀行口座に給付金を直接振り込む電子支払システムを導入することで、職員4万人の削減を達成するとしているほか、内務省は、生活保護受給資格の対象を縮小することによって、職員2700人の削減を実施する考えである。その他、医師と薬剤師が調剤するすべての処方薬に関する薬価決定機関などの国民医療制度(NHS)関連機関も、従来の業務を電子化する形に切換えることで職員5000人を削減するとしている等、不足分は生産性の向上とIT化によって達成するとしている。

他方、計画の規模からいって、政府が人員削減策をスムースに進められる保証はないという意見もある。労働関係のシンクタンク、ワーク・ファウンデーションのウィル・ハットン代表は、組織再編を成功させるには、最初に人員削減を行なった後、残った職員の意欲を高めることによって、組織の全プロセスを改革できる有能で意欲的なリーダーが必要であると訴える。同氏は、公務部門において、こうした大規模な組織再編に対処できる熟練管理者は極めて少ないと見ている。また、ITを導入することによって、業務効率の向上を達成できるかどうかについても、多くの民間企業がそれに失敗していることを考えると、疑問と言わざるを得ないとも指摘した。人員削減策をスムースに進めるためには、特に効果的な情報伝達と動機付けの面で、高度な人材管理が不可欠であるにもかかわらず、公務員組織において効果的な人材管理が行なわれていない点も合わせて指摘している。

公務部門の大規模な人員削減は、サービスの質の低下を招く恐れもある。公務員組合(PCS)のマーク・サーワトカ書記長は、今回のリストラは「大虐殺」であり人員削減策に強制解雇が盛り込まれた場合には、ストライキも辞さぬと述べるなど、組合は反発の姿勢を示している。これに対しゴードン・ブラウン財務相は、大幅な人員削減を不況期に実行すれば、深刻な問題を引き起こしかねないとして、経済が堅調である現時点でストが起ころうとも、人員削減策を進めざるを得ないと断言、削減策の実現に向け強い姿勢を見せている。

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