相次ぐ外国投資と雇用への期待
国際的な大手会計事務所のアーンスト・アンド・ヤング社は、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの企業513社の幹部に対して、対外直接投資に関する欧州の魅力度調査(2004 Survey of the Attractiveness of Europe for Foreign Direct Investment)を行った(注1)。その結果によれば、回答企業が投資先として魅力を感じる地域として、西欧に次いで中東欧が2位にあがっている。また、魅力的な投資先としてあげられた上位10カ国のうち、東欧からはポーランド(5位)、チェコ共和国(6位)、ハンガリー(10位)の3カ国がランクインしている。
このうち10位にランクインしたハンガリーは、欧州の中央に位置するというアクセスの良さ、労働費用の相対的な低さ等が誘因となって、日本や欧米の企業が多数進出している。さらにEUに加盟した5月以降は、外資系企業による子会社の設立や生産拡大の動きが相次いで報道されている。
日系企業では朝日硝子(自動車ガラス)の生産会社設立、デンソー(エンジン関係製品)の生産拡大。ドイツ系企業ではロバート・ボッシュ(自動車部品)の生産拡大、HVB(金融)の支店設立。米国系企業ではエクソンモービル(石油)のサービスセンター設立、ゼネラルモーターズ(GM)傘下のキャデラックによる、中東欧マーケティング本部の設置計画が報じられている。
このほか、オーストリアのヒンターベルガー・ベタイリグングス(自動車部品)が生産と物流の全業務の移管を計画。オランダのジェトロニクス(システム設計)がIT(情報技術)サービス事業の欧州本部の移管を計画。スウェーデンのエリクソン(通信機器)がサービスセンター及び研究・開発センターの設立を計画、などが報道された。
ハンガリーの一人当たり労働費用は、ドイツの2割に満たない(2001年、Eurostat)。
しかし、ハンガリーの労働力についてはコストパフォーマンスが高い等、質の高さも評価されている。今後の外国企業の対ハンガリー戦略は、労働集約型生産拠点から研究・開発、ロジスティクの拠点へと転換していくという見方もある。
そうした動きに伴う雇用の創出も期待される。先にあげたオランダ・ジェトロニクス社のIT事業本部ではエンジニア50人を新規採用、スウェーデン・エリクソン社の研究・開発センターはブダペストのサイエンス・パーク内に設置予定だが、150人を雇用する見通しだという。
今後は、そうした知識集約的拠点の前提となる質の高い労働力の育成と、より高賃金の国へ流出することを防ぐような条件整備が必要となる。これはハンガリーに限らず、多くの東欧諸国に共通の課題といえる。
注
- Ernst & Young “Attractiveness of Europe-2004 Survey” (同社のホームページで公開されている。)
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