最大の性差別訴訟、ウォルマート側控訴へ
160万人の女性従業員を原告とする性差別訴訟で、ウォルマート社は、集団訴訟の認定した連邦地裁の決定を不服として7月2日に控訴した。全米史上最大の性差別集団訴訟として注目を集めるこのケースは、今回の控訴により実際に裁判が始まるまで1年以上かかることが予想され、準備期間に余裕のできるウォルマート側に有利に働くものとみられている。
訴訟に至る経緯
今回の集団訴訟は、もともと2001年に6人の女性従業員が「給与・昇進・職業教育などに関して男女差別があり損害を被った」として、集団訴訟を求めて提訴したことに端を発している。この提訴に対し、サンフランシスコ連邦地裁は6月22日、1998年以降に勤務経験のある現旧の女性従業員約160万人を原告とする集団訴訟を認める決定を行った。
この認定審査にあたり原告側弁護団が提出した資料によると、ウォルマートでは男性が平均2.8年でアシスタントマネージャーに昇進するのに対して、女性は平均4.38年かかる。また店長への昇進は、男性が8.64年であるのに対して、女性は10.12年かかる。また管理職の賃金をみると、男性管理職の平均的な年収が10万5862ドルであるのに対して、女性管理職は8万9280ドルである。全体では、同職種同レベルにおいて男女間の時給を比較すると、女性は男性よりも6.7%低くなっている。このような資料にもとづいて、裁判所は、「6人の訴訟内容は、ウォルマートの他店舗、他職種においても同様にみられる」として集団訴訟の取り扱いを認定した。
この認定について、ウォルマート側は断固反対の姿勢をくずしておらず、「今回の件はあくまで6名の女性従業員の個別的な事例であり、集団訴訟の認定は収拾のつかない事態を招く」として控訴した。
各界の反応
今回の訴訟により、ウォルマート株は集団訴訟が認定された当日に1.6%下落した。また、他社の差別訴訟判決の前例をもとにすると、今後合計64億ドル以上の損害賠償支払いを命ぜられる可能性がある。
これまでもウォルマートの出店については、地元小売店への影響を懸念して自治体や住民による反対運動がみられたが(海外労働情報4月号)、今回の訴訟により、今後は更に出店反対の動きが広まるものと予想される。
社会責任投資(SRI)ファンド大手会社も、今回の差別訴訟を受けて「米国における女性差別の実態は、未だに根深いものがある(関連記事 海外労働情報7月号)。投資家にとっても、長期的視野に立った平等な職場環境づくりの努力を行っている企業への投資は重要である」としてウォルマート側に事態の改善と情報開示の強化、SRI基準の採用などを改めて要請した。
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