国営電力会社の民営化、労組の強い反対で進行遅れる
―タイの国営企業民営化問題続報
電力・電信などの分野でタクシン政府が強く推し進めている民営化政策に労組が強く反対しており、進展が思うように見られていない。国営企業の給与は、一般的な公務員よりも高く、基本的に終身雇用であるため、職員にとっては、民営化後の給与や雇用問題に強い危機感があると見られている。
国営企業の民営化に際し、外資の制限を強化
民営化を労組が反対する理由の1つとして、外資による乗っ取りの懸念が挙げられる。そのため、政府は4月7日の閣議において、国営企業民営化上場に関する規定を次のように定めている。
- 旧国営企業の運営においては、民営化後も政府の関与を維持する。具体的には、政府の出資比率は50%以上、電力、水道事業の公団は75%を維持することとする。
- 外国人出資比率を制限する。政府保有株放出はタイ人投資家を優先とし、希望者には抽選で割り当てる事とする。また投資家1人当たりの出資比率は5%を上限とする。
- 株の売却にあたり、職員は株券を額面で購入することができ、購入資金が不足する場合には財務省が貸付を行う、といった職員優遇対策を実施する。
また、政府は2004年中に、国営企業6社の民営化上場を計画しているが、現在までに上場が決定しているのはエアポート・タイランド(AOT)の1社のみで、残りの5社は民営化のめどさえ立っていない状況。タイ発電公団(EGAT)は当初、2004年初頭には上場する予定であったが、労組の反対運動が強く、結局計画は延期されたままである。こうした労組の反対運動は、他の国営企業にも伝播しており、現在、マスコミ公団(MCOT)、タイ製薬公団(GPO)などでも同様の労組反対運動が盛り上がりつつある。なお、2004年内に上場を計画しているのは、上記の各公団の他、首都電力公団(MEA)、地方電力公団(PEA)、TOT(旧電話公団)など。
EGAT幹部、民営化凍結との報道を否定
4月23日に開催されたEGATの理事会において、同社幹部らは政府が決定した新規株式公開(IPO)計画の取り下げを評決し、同社のチャイアナン会長とシリチャイ労組委員長は、水、電気など基本公共サービスを提供する国営企業の民営化への反対などを求める共同宣言に調印したとの報道が4月24日付の現地紙ネーションで報じられた。しかし、4月26日付のバンコクポストでは、同会長は、上記の民営化案凍結の報道を間違ったものであると否定している。会長によると、理事会では、労組による反対案発表を許可しただけであり、共同宣言の調印には至っていないということだ。一方、タクシン首相はこれらのEGATの動きに関して、発電公団の理事会が民営化凍結を決めたとしても計画を続行すると明言。国営企業の民営化は2001年に行われた下院総選挙の公約であり、破棄するわけにはいかないと話している。
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