EU憲法草案採択
―ブレア首相は国民投票による批准に意欲

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年7月

2004年6月18日、拡大EUの基本条約となるEU憲法草案が採択された。協議において政府は、イギリス産業連盟(CBI)をはじめとする企業の意向に添った主張を行った。とりわけ争点とされていたのが、1.基本権憲章(EU市民の市民的、政治的、社会的および経済的権利を確認するもの)の扱い、2.加盟国単独による拒否権発動分野の縮小、の2点であった。

EU外相会合に先立つ2004年5月、ジャック・ストロー外相は、CBI幹部との会合の場で「EU憲法によって英国企業の競争力が失われるようなことがあってはならない」と述べ、草案採択を契機とするEUの権限強化を懸念していた。これまで基本権憲章は単なる政治宣言にとどまり、加盟国に対する法的拘束力を持たなかった。しかし今回草案に組み込まれたことで、「EU労働時間指令」に対する特例規定(いわゆる「オプト・アウト」)等の問題において英国の自主権がより制約を受けることが考えられる。一方拒否権を発動する分野については英国の主張が受け入れられるかたちとなった。

EU憲法の発効には全加盟国における批准が求められており、現時点で英国、デンマーク等の七か国において国民投票の実施が決定している。英国で国民投票が行われるのは1973年のEEC(欧州共同体)への参加の是非を問うもの以来ほぼ30年ぶりのこと。トニー・ブレア首相は国民投票の実施に対して、英国がEUにおいて主導的な役割を果たす時が来た、と批准への意欲を示しているが、世論調査によれば、批准すると答えた国民はわずか二割にすぎない。

今後政府は、経営側を批准に導くようにEUレベルの協議を進めていかねばならない。しかしこのアプローチでは、労働組合側に反対票を入れさせることにもなりかねない。事実イギリス労働組合会議(TUC)は、「銀行家のためのEU憲法ならいらない」としており、今後の舵取りに関心が集まっている。

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