中華人民共和国労働社会保障部第21号「最低賃金規定」(日本語訳)

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「最低賃金規定」は2003年12月30日に、労働社会保障部第7回部務会議で可決され、これを公布する。2004年3月1日から施行とする。

部長:鄭斯林
2004年1月20日

第一条
労働者の労働報酬取得の合法権益を維持保護し、労働者個人およびその家族の基本生活を保障するため、労働法と国務院の関係規定に従い、本規定を制定する。
第二条
本規定は中華人民共和国内の企業、民間の非営利組織、労働者を雇用している個人経営者(以下は事業主とまとめて呼ぶ)およびそれらと労働契約関係を形成する労働者に適用する。
国家機関、非営利組織、社会団体およびそれらと労働契約関係を形成する労働者も、本規定を従い施行する。
第三条
本規定がいう最低賃金基準とは、労働者が法定労働時間あるいは法に基づき締結した労働契約が約束した労働時間内に正常な労働を提供したという前提において、事業主が法に基づき支給すべき最低労働報酬のことである。
本規定がいう正常労働とは、労働者が法に基づき労働契約を締結し、法定時間内あるいは労働契約が約束した労働時間内に従事した労働である。労働者は法に基づく有給休暇、肉親を訪ねる休暇、結婚式や葬式休暇、生育休暇、生育制限のための手術休暇など、国家が定めた休暇期間について、あるいは法に基づき法定労働時間内に社会活動へ参加する時間について、正常な労働時間を提供したと見なされる。
第四条
県レベル以上の地方人民政府の労働保障行政部門は、本行政地域内における事業主の本規定の執行状況についての監督と検査の責任をもつ。各級の労働組合組織は法に基づき本規定の執行状況に対して監督を行い、事業主が労働者に対する賃金の支給が本規定を違反していることを発見した場合、当該地域の労働保障行政部門が処理することを要求する権限をもつ。
第五条
最低賃金基準は一般的に月間最低賃金基準と時間最低賃金基準を採用する。月間最低賃金基準はフルタイムの就業労働者に適用する。時間最低賃金基準はフルタイムでない就業労働者に適用する。
第六条
月間最低賃金基準を確定し調整する場合、当該地域就業者およびその扶養人口の最低生活費用、都市部の消費価格指数、従業員個人が上納する社会保険費と住宅積み立て金、従業員平均賃金、経済発展水準、就業状况等の要因を参考にしなければならない。
時間給の最低賃金基準を確定し調整する場合、月間最低賃金基準の公布を基に、事業主が上納すべき基本養老保険費と基本医療保険費などの要因を考慮しなければならない。同時にフルタイムでない労働者の仕事の安定性、労働条件と労働強度、福利などの面におけるフルタイム就業者との間の差異を妥当に考慮しなければならない。月間最低賃金基準と時間最低賃金基準の具体的な計算方法については付録を参照にする。
第七条
省、自治区、直轄市範囲内の異なる行政区域は異なる最低賃金基準を設けることも可能である。
第八条
最低賃金基準の確定と調整案は、省、自治区、直轄市の人民政府の労働保障行政部門および同級の労働組合、企業連合会/企業家協会と相談しながら策定し、策定した草案を労働保障部に報告する。草案の内容として、最低賃金の確定と調整の根拠、適用範囲、作成基準と説明を含む。労働保障部は、草案を受け取った後、全国総工会(労組の全国組織)、中国企業連合会/企業家協会の意見を求めるべきである。
労働保障部は草案に対して修正意見を提出できる。草案を受け取ってから14日以内に修正意見を提出しなかった場合、同意と見なす。
第九条
省、自治区、直轄市の労働保障行政部門は、本地区の最低賃金基準案を省、自治区、直轄市の人民政府に報告した上で批准し、批准後7日内に当該地域政府公報、あるいは少なくとも一つの全地区の新聞に公布しなければならない。省、自治区、直轄市の労働保障行政部門は公布後10日内に最低賃金基準を労働保障部に報告しなければならない。
第十条
最低賃金基準を公布と実施の後、本規定の第六条が定めた関連要因に変化が生じた場合、適宜に調整しなければならない。最低賃金基準は、少なくとも2年に一回調整しなければならない。
第十一条
事業主は最低賃金基準公布後10日内に当該基準について事業所内の労働者全員に公示しなければならない。
第十二条
労働者が正常労働を提供する時、事業主が労働者に支給する賃金は下記各項目を取り除いた後に、当該地域の最低賃金基準を下回ってはならない:
  1. 勤務時間延長時の賃金
  2. 日勤、夜勤、高温、低温、炭鉱の下、毒害のある特殊労働環境と条件などの手当
  3. 法律、法規と国の規定が定める労働者福利待遇等。
出来高給や歩合給などの賃金形式を実施する事業主は、科学的で合理的な労働ノルマを前提として、労働者に支給する賃金は相応の最低賃金基準を下回ってはならない。 労働者が本人の理由で法定労働時間内あるいは法に基づき締結した労働契約が約束した労働時間内に正常労働を提出できなかった場合は、本条の規定を適用しない。
第十三条
事業主が本規定の第十一条規定を違反した場合、労働保障行政部門はそれに対して期限つきで改正を命じる。本規定の第十二条規定を違反した場合、労働保障行政部門が期限つきで支給しなかった分の労働者賃金の支給を命じ、支給しなかった賃金の1~5倍で労働者に賠償金を支給するように命じることもできる。
第十四条
労働者と事業主の間に最低賃金基準の施行について争議が発生した場合、労働争議処理の関係規定に基づき処理する。
第十五条
本規定は2004年3月1日から実施する。1993年11月24日に労働部が以前に公布した《企業最低賃金規定》がそれと同時に廃止となる。

付録:最低賃金基準の計算方法

最低賃金基準の計算方法

  1. 最低賃金基準確定に考慮すべき要因

    最低賃金基準を確定する時に一般的には都市部住民生活費の支出、従業員個人が上納する社会保険費、住宅積立金、従業員平均賃金、失業率、経済発展水準などの要因を考慮する。以下の計算式で現すことができる:

    M=f(C、S、A、U、E、a)

    • M は最低賃金基準
    • C は都市部住民の一人当たりの生活費用
    • S は従業員個人が上納する社会保険費、住宅積立金
    • A は従業員平均賃金
    • U は失業率
    • E は経済発展水準
    • a は調整要因
  2. 最低賃金基準費定の通用方法
    1. 比重法。すなわち都市部住民の家計調査資料に基づき、一人当たりの所得が最も低い世帯を貧困世帯として一定比率で確定し、貧困世帯の一人当たり生活費用の支出水準を算出する。さらに就業者一人ずつの扶養係数を掛けて、一つの調整数を加える。
    2. エンゲル係数法。 すなわち国家栄養学会が提供する当該年度の標準な食物リストと標準食物摂取量に基づき、標準食物の市場価格とあわせ、最低食物支出基準を算出し、エンゲル係数で割って、最低生活費用基準を算出する。さらに就業者一人ずつの扶養係数をかけて、一つの調整数を加える。

    以上の方法で月間最低賃金基準を算出した後、従業員個人が上納する社会保険費、住宅積立金、従業員平均賃金水準、社会救済金と失業保険金基準、就業状况、経済発展水準等を考慮して必要な修正を加える。

    例として、ある地域の最低收入層では一人当たりの月間生活費支出は210元で、就業者一人の扶養係数は1.87、最低食物費用は127元、エンゲル係数は0.604、平均賃金は900元。

    1. 比重法で算出した当該地域の月間最低賃金基準は:
      月間最低賃金基準=210×1.87+a=393+a(元)(1)
    2. エンゲル係数で算出した当該地域の月間最低賃金基準は:
      月間最低賃金基準=127÷0.604×1.87+a=393+a(元)(2)

    計算式(1)と(2)の中のaの調整要因は主に当該地域の個人が上納する養老、失業、医療保険費と住宅積立金等の費用。

    また、世界的にみて月間最低賃金基準がおおよそ月間平均賃金の40~60%に相当することを踏まえて、当該地域の月間最低賃金基準の範囲は360元~540元の間にあるべきである。

    時間最低賃金基準=〔(月間最低賃金基準÷20.92÷8)×(1+事業主が上納すべき基本養老保険費、基本医療保険費の比率の和)〕 ×(1+浮動係数)

    浮動係数の確定は主にフルタイムでない就業労働者の仕事安定性、労働条件と労働強度、福利等の面におけるフルタイム就業者との間の差を考慮すべきである。

各地は以上の計算方法を参考にして、当該地域の実状に基づいて月間と時間最低賃金基準を合理的に確定すべきである。

出所

  • 労働社会保障部弁公庁(国際研究部仮訳)

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