外国人労働者採用規制強化への動き

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2004年6月

アズミ・カリド内務相は5月7日、外国人労働者受け入れ規制を強化する方向で人的資源省と見直しを協議したうえで、2ヶ月以内に内閣に各種改正法案を提出する方針を明らかにした。今回の見直しは、外国人労働者の急増に対する政府の懸念を反映したもの。規制強化の中身は、事前研修の義務化、雇用主による直接契約の義務化、仲介業者による外国人労働者供給制度の廃止等、多岐に及ぶ見通しだ。これと同時に政府は、自国民労働者の積極的な活用を促進する各種方針も示している。

マレーシアでは、国内労働力人口に占める外国人労働者の割合が高く、1000万人のうち120万人を合法的外国人労働者が占め、不法外国人労働者を合わせるとその数は200万人程度に及ぶとされている。主な送り出し国はインドネシア、フィリピン、ベトナム、カンボジア等で、製造業、プランテーション、建設業等で非熟練・半熟練労働者として就業している。

こうした外国人労働の増加傾向を、フォン・チャオン人的資源相は、あくまでも労働集約経済から資本集約型経済への転換期に特徴的な労働力不足に対する一時的な現象と捉え、長期的な外国人労働力への依存には否定的だ。そのため、不必要な外国人労働者の増加や不法就労者の流入を回避するための規制強化策を検討し、実施に移す意向を示している。

その一つは、請負業者による外国人労働者供給制度の廃止及び雇用主と外国人労働者との直接契約の義務化。これは、特に製造業において、人件費削減を理由に、自国民労働者よりむしろ外国人請負労働者を、請負業者を通じて、または直接採用する使用者が増えていることへの政府の懸念を反映したものだ。また、外国人労働者の採用を必要とする使用者に、人的資源省への許可申請を義務づけるという方針も検討されている。これにより、当局による外国人労働者の把握を容易にし、入管管理の透明化を図るとともに、外国人労働者の保護を拡充する意向だ。同省はまた、外国人労働者のマレーシアにおける就業にあたって、国家職業訓練委員会(MLVK)が認定する訓練機関での事前研修を義務づける方針も明らかにしている。運用に際しては、MLVK認定の訓練機関による許可を条件に、送り出し国側の事前研修も認める方向だ。こうした人的資源省の動きに足並みを揃えるかたちで、内務省では、スマートカードや指紋認証を使ったデータベースの開発に関する検討も進めている。

これら規制策と平行して人的資源省は、自国民労働者の積極的な活用を進める方策も打ち出している。具体的には以下のとおり。

  1. 自主退職制度の導入を計画中の使用者をモニターし、それが自国民労働者のレイ・オフ目的でないことを確認する。
  2. 自国民労働者の採用を優先させるため、採用募集広告を主要紙に少なくとも2日間以上は掲載するよう使用者に義務付ける。
  3. フレックス・タイム制など柔軟な労働時間制を導入することにより、主婦の積極的な活用を促す。

なおマレーシア政府は、科学技術省のイニシアティブでまもなく立ち上げとなる「頭脳獲得プログラム」の下、熟練外国人労働者の招致及び外国に流出した優秀なマレーシア人の帰国奨励については、積極的だ。そのため、熟練外国人労働者については、逆に入国規制を緩和するため、ビザ発給の専門機関を設置する等、手続きの簡素化を図る方針を明らかにしている。

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