連邦議会、職業訓練に関する企業課徴金法案を可決

カテゴリー:労働法・働くルール人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2004年6月

ドイツ連邦議会は5月7日、連立与党(社会民主党=SPDおよび緑の党・同盟90)の賛成多数で職業教育訓練保障法案を可決した。同法案によると、企業は従業員数の7%に相当する訓練生を受け入れなければならず、これを下回った場合は課徴金を支払わなければならない。この法案に対しては経済界の反発が強く、連邦参議院での法案成立見送りや、労使等関係者による「職業訓練協定」締結の必要性などが論議されている。一方、労働組合側は、経営側の「協定」締結を模索する動きについて反発し、今回の法案を支持している。

この法案によると、企業(事業所)は従業員数(社会保障義務のある者を対象)の7%に相当する訓練生を受け入れなければならない。これを下回った場合、下回った人数に比例した課徴金支払いを義務づけられる。課徴金は基金としてプールされ、訓練生が7%を上回った事業所に対しては、その人数に応じて、一人当たり7500ユーロを上限とする奨励金が支給される。産業別協約などで同様の取り決めがなされている場合は、法律による課徴金の義務は免除される。従業員10人未満の企業は課徴金の対象とならない。職業訓練ポスト創出の目標は、毎年秋の時点で、訓練ポスト数が、それを求める訓練対象者数を全体で15%以上上回っていることである。

法案の連邦議会通過に際して、CDU/CSU(キリスト教民主同盟/社会同盟)など野党は同法を「官僚主義的な化物」であるとし、新たに職業訓練の場を創出する効果はないと非難した。経済界も、関係者による「職業訓練協定」を結ぶ用意があるとし、BDI(ドイツ産業連盟)、BDA(ドイツ経営者連盟)、DIHK(ドイツ商工会議所)、ZDH(ドイツ手工業会議所)のトップは共同で、「法律が現実に施行に移されるなら、すでに提起している協定の存在意義が失われる」と訴えて、連邦参議院で同法の施行が決まる前に協定を結ぶ意向を示している。

連邦議会通過後、連邦参議院(各州政府の代表によって構成される)に送られるこの法案は、連邦議会との両院協議会で審議される予定だが、成立のために連邦参議院での可決を必要としない。ただし、同院で3分の2以上の反対があると非成立となる。このため、経済界には、同院で多数派のCDU/CSUだけでなく、SPDの州代表の同調を期待する声もある。

SPDが政権をもつ州では、課徴金の徴収や関連する施策にかかるコストや、州内の経営者団体とのあつれきなどを回避したいという意見が出ているからだ。公務関連の職場における職業訓練ポストの創出が十分でないことも背景にある。また、東西地域、あるいは各州ごとに職業訓練ポストの数が大きく異なっていることも、論議を複雑にしている。中央の政権内でも、W・クレメント経済労働相などは、賦課金を強制する法律に懐疑的な立場を取っている。

労組は経営側の思惑に対して反発している。金属産業労組のJ・ペータース委員長は、経営側が提起する「職業訓練協定」について、独ハンデルスブラット紙に「拘束力のないショーのような催しのために彼らの意のままにはならない」と語った。経営側の過去の対応が不十分だったことを指摘し、法律の施行が視野に入った段階で「彼らは再び内容のない約束でもって(職業訓練ポストの創出の)裏をかこうとしている」と批判している。同氏は労組側の意向として、成立した法律をベースにして「各労組が労働協約において対応する用意がある」と説明する。 労働協約に関しては、最近では、5月中旬に妥結した化学産業協約における職業訓練ポスト創出の取り決めが注目された。化学労使は来年までに2%、2003年から07年までの間で合計7%、ポスト数を増やすことで合意した。BDAなど経営側にも、このような形の解決策を評価する声がある。

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