外資で2万7千人の雇用創出

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2004年6月

フランスの失業率は高止まりしている。2003年の失業率は前年から0.7%悪化し、9.7%となった。就業者数は前年から6 万7千人減少と、10年ぶりの大幅な雇用縮小を記録した。

ラファラン首相は4月の施政方針演説で雇用対策を最優先課題にあげ、「企業の投資・生産活動の活性化が雇用につながる」として、その支援に取り組むことを表明した。

こうした中、対仏投資庁(AFII)が公表した対仏投資と雇用創出に関する調査結果は、久々に明るいニュースとなった。この調査は、外国企業がフランス国内で実施した「国際的流動性があり、雇用創出を伴う投資」を集計したものである(流通・観光分野は対象外)。それによれば、2003年の外国企業によるフランスへの投資件数は対前年比25%の増加となった。これに伴う雇用創出も前年比20%の伸びを見せ、その数は2万7335人に上っている。

好調分野は自動車、サービス、IT、バイオ

対仏投資による雇用創出数は2000年にピークの3万5359人に達した後、2002年まで減少が続いていた。2003年の投資の内容をみると新規の進出が減少し、既存事業の拡大や、経営難に陥った企業の買収などが増えている。昨年は約6300人の失業が外資によって回避されたという。

雇用創出数を国別に見ると、最も貢献したのは前年に続き米国で、日本は6位に入っている。分野別にみると、部品製造なども含めた「自動車」産業への投資が突出して多く、雇用創出数は6683人と全体の25%近くを占める。これに「サービス・金融」(1908人)が続き、次いで「ソフトウエア・IT」、「化学・プラスチック加工・バイオ」となっている。地域別にみると、パリを中心とするイルドフランス(3994人)、ローヌアルプ(2998人)、ノール・パドカレ(2853人)、ミディピレネー(2271人)の順で多く、これにロレーヌを加えた5地域で全体の51%を占めている。

投資国別の雇用創出数

資料出所:NNA POWER EU

世界的な研究開発拠点の設置も予定

今回の調査結果についてAFIIのクララ・ゲマール長官は、「経済分野のイニシアチブ、技術革新、行政手続きの簡素化、政府組織の近代化といった、政府が講じてきた措置が投資家に認められたため」と分析し、投資先としての魅力をアピールした。

なかでも技術革新に関しては、仏政府はEUの目標に即し、2010年までに国内の研究開発費を対GDPで3%まで引き上げることを目標に掲げている。昨年4月には「技術革新計画」を発表し、国としての研究開発戦略を表明した。その中心は民間の研究開発や技術革新の促進で、国としての優先分野(IT通信技術、バイオ・環境技術など)やEUの戦略との連携も含まれている。

また国内の研究開発拠点のモデルとして、グルノーブル近郊にマイクロエレクトロニクスの研究施設を集結させた。これは近年のフランスにおける最大の産業投資といわれるが、EUの欧州委員会(注1)はその実績を評価し、この地域にナノ・バイオ産業集積の世界的拠点を設立することを決定した。

これが実現すれば、国内・国外双方の企業にとって、投資先としてのフランスの魅力は一層高まるだろう。さらなる雇用創出に結びつくことが期待される。

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