就業支援のための積極的政策と今後の課題

中国就業状況と政策(日本語訳)

2003年度「中国就業状況と政策白書」

4月26日、国務院は2003年1年間の中国全土の就業状況と政策に関する動向をまとめた白書を発表した。白書の内容は、1.就業基本状況、2.積極的就業政策、3.労働者能力開発政策、4.農村労働力の就業状況、5.女性、青年、身体障害者の就業政策、6.21世紀前半の就業状況の展望を柱として、3月に開催された第十回全国人民代表大会でも議論され重点施策として位置付けられた労働者の就業問題について、現状を明らかにしつつ、政策展望を試みている。毎年8%以上の経済成長を目指す中国にとって、労働者の就業問題は重要な成長のファクターとなっている。

▼2003年就業状況

(※参考「2003年・海外労働基礎情報(中国)」)

2003年の16歳以上の経済活動人口は7億6075万人である。就業者数は、7億4432万人で、1990年から2003年の間に9683万人が増加した。産業別就業構造では、製造業など第二次産業の就業者数は変わらないが、第三次産業就業者数が、1990年には18,5%から2003年には29,3%と大幅に増加している。第一次産業従事者が農村から都市に移動し、第三次産業に就業している実態が浮き彫りになっている。2003年の都市登録失業率 は4.3%、800万人であった。2003年の当初目標値は4,5%であったが、これを下回ることができたことは、政府の再就職支援政策が効果を発揮した結果であると分析されている。

政府は、2004年は4.7%前後と予想している。これは、2003年の実績を上回る失業率の予想については、ベビーブーム世代の新規労働力としての労働市場への参入、農村部から都市部への流入の加速、再就職支援事業の推進による認定の増加で失業者と認定される者が増えることなどが考慮されているといわれる。

▼就業支援政策の概況

「三つの代表」の実現にむけ、中国では国民経済発展計画、内需拡大方針のもと積極的就業政策が期待されている。すなわち、第三次産業での就業機会の拡大、中小企業の発展促進、多様な就業形態の促進等が具体的に目指されている。

就業支援のための政策としては、職業情報提供、職業紹介などの職業サービスの他、技能訓練、失業保険などがある。政府は、需要と供給のミスマッチを防ぐため、労働力市場情報の整備を含めた公共職業サービスの充実に力をいれている。また、80年代半ばに導入された失業保険制度についても、99年1月発効の「失業保険条例」に基づき、失業者の再就職支援のための方法として円滑な運用に努力した。特に、下崗(いわゆるリストラ労働者)のための再就職支援は、深刻な課題である。就業困難な「40、50世代」(50代以上の男性、40代以上の女性)を対象としたさまざまな再就職支援サービスの実施や最低生活費保障を含めたセーフティネットの確立は急務の課題となっている。

全就業人口の6割を占める農村労働力に対して、90年以降、政府は、良好なサービスなどを心がけてきた。特に、昨年は「2003年-2010年全国農民技工訓練計画」が発表され、この7年間に6000万人の農民に職業技能訓練を実施し、都市労働者に転換させるための政策が開始されている。

▼職業能力開発政策の概況

経済発展のためには労働者の資質の向上は必須の課題である。政府は、就業前訓練、専門訓練、養成工訓練、在職労働者訓練、初級・中級・高級の各技能者職業資格訓練などさまざまなプログラムを積極的に展開している。職業教育を行う学校・施設としては、高等職業学院校、高級技工学校、中等専門技術学校、技工学校、職業訓練中心、町村営職業訓練機構、企業職業訓練センターなどがある。

実用技術を習得するために、2003年末時点で、全国3167ヵ所の技工学校で191万人が学び、3465ヵ所の就業訓練センター、1万7350ヵ所の社会訓練機構などで、1年間に1071万人が訓練を受けた。

就業をめぐる将来展望

今後、中国の16歳以上の労働人口は、年間平均550万人ずつ増え続け、20年後には9.4億人に達する。就業人口も8.4億人に達することが予想される。白書は、中国の豊富な労働力を社会経済の発展のために最大限活かせる社会の実現、さらに労働者が自由に自主的に職業を選択できる制度、政策の推進、平等で、良好な労働市場の実現などを全体目標として掲げており、労働者が積極的に能力を生かして働ける就業環境作りと徹底した労働市場の管理を提言している。

2004年中国雇用フォーラムでの議論

4月28日から30日の3日間にわたり、北京で中国政府と国際労働機関(ILO)との共催による雇用フォーラムが開催され、「経済のグローバル化、構造改革の進展と就業」をテーマに討論がもたれた。主には、経済のグローバル化は就業にどのような影響を及ほしているのか、貧困対策、労働力市場の整備、雇用における平等な処遇、良好な職場環境などについて議論が展開された。

特に、下崗の再就職問題の解決が、中国政府が第一に取り組まなければならない積極的政策課題であると確認され、議論された。また、社会保障制度を速やかに整備することが経済の発展のために重要性であると、中国政府の各専門家は指摘している。失業保険は就業保障のメカニズムを有効に機能させるために重要な役割を果たすという意見や、社会保険改革を進め、下崗のための基本生活費を保障する制度を整備することが社会の安定のために必要であるという意見である。

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