国営企業の民営化反対運動

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年5月

1997年に起きたアジア経済危機以後、国際通貨基金(IMF)の勧告を受けて、政府主導による国営企業の民営化が進められてきたが、株式相場の低迷によりあまり進捗していなかった。しかし、ここ数年の経済回復と株式相場の回復状況から、再度民営化が進められ、2004年1月に発表された国営企業民営化計画では2006年までに12社をタイ証券取引所(SET)に上場する計画であるという。

EGATの民営化反対運動

民営化反対運動が最も大きかったEGAT労組は、政府の国営企業民営化計画案が発表された直後の1月23日から反対活動を行うことで合意。シリチャイ議長は、民営化が強行されれば、20年前の全国規模で起こった大規模ブラックアウト行為も辞さない構えであることを明らかにした。さらに同日、ノンタブリ県にあるEGAT本部には全国の職員約1万人が終結し、民営化運動に反対するデモを行った。1月25日には、同社が職員に対して株式上場に関する説明会を開催したが、民営化に反対する労組のメンバーらが激しい反対運動を見せ、警官が介入する騒ぎとなった。

EGATは2004年5月に株式上場が予定されており、その株式時価額は3000億バーツに上ると見られている。2006年までに上場が予定されている12社全体での時価総額が5800億バーツとされている中で、EGATがその半数以上を占めている。

今回の民営化反対運動では人員削減政策が打ち出されているわけではなく、民営化に際しての社員の持ち株の制限についてが問題となっている。現在の案では、職員は各々の月給8か月分までの自社株を購入することができるとされているが、これを10か月分まで購入できるように要求しているという。

これに対してタクシン首相は、この問題が職員の利得追求の結果によるものだと非難。同社の株が外資系企業に売却されることを恐れるような労組の発言は言い訳にすぎず、自社株を少しでも多く購入し、それを株式上場後に売却することによって利益を得ようとしている人々の勝手な行動である、と発言している。首相は、先に2001年に民営化を行い、成功を収めている石油会社のPPT社の例を挙げ、EGATもPPT社のようなスムーズな民営化への移行が行えることを望むと述べている。

とはいえ反対運動は3月上旬になっても続いており、解決の途は見出されていない。EGATの関連会社でもある首都発電公社(MEA)の組合員や国営企業労組の国営企業労働関係連盟のメンバーも反対運動に参加し、3月5日は10万人規模のデモを行うと警告が出された。

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