賃金改革部会、指針を発表

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年5月

新しい賃金制度のあり方を検討する政労使合同部会は1月29日、企業の競争力確保と雇用の安定を目的に、賃金構造改革の指針を発表した。不況やグローバル競争によって業績が悪化した場合の対応として、従業員の解雇ではなく、賃金の調整を採用するよう企業に促すため、柔軟な賃金体系の標準モデルを示した

政労使からなる賃金改革部会は、企業、業界団体、関係省庁の代表者100人以上を動員して標準賃金モデルを策定した。業績に応じて即座に賃金を調整できる可変部分を増やすこと、賃金体系を年功型から能力・業績主義型へ転換することが柱。

給与の可変部分を増やせば実質的な賃下げにつながるとの批判に対し部会は、上級管理職ほど可変部分の割合を増やし、さらに業績と可変部分がどのように連動するかを明示するよう企業に求めている。

具体的には、一般従業員の賃金構成は固定70%、可変30%。上級管理職の場合は固定50%、可変50%が望ましいとしている。また、可変賃金の増減幅と企業業績の関係を示す「主要業績指標」を構築するよう提案している。

こうした賃金改革の取り組みに及び腰の企業も少なくない。年功賃金から能力賃金への転換は手間がかかるうえ、可変部分を増やせば管理層の給与減少につながりかねないからだ。これまでの調査でも、月次可変部分(MVC)を月給に取り入れる動きは期待しているほど広がっていないことが分かっている。

部会の委員長のヨン・インイ人的資源省事務次官は1月29日の記者会見で、賃金改革の推進に強い意欲を示し、同席したシンガポール・ビジネス連盟(SBF)のステファン・リー会頭も「今度こそは押し通す覚悟だ」と述べた。

賃金改革部会の策定した標準賃金モデル

(AVCは年間可変部分、MVCは月間可変部分)

  1. 可変賃金部分の増加
    • 一般従業員=基本賃金70%、AVC20%、MVC10%。
    • 中・下級管理職=基本賃金60%、可変賃金40%。
    • 上級管理職=基本賃金50%、可変賃金50%。
  2. 主要業績指標の確立
    • 会社の業績や個人の成績を反映してボーナスやMVCなどを決定するための基本データを明示する。例えば利益と生産性が要素として組み込む。
  3. 年末ボーナス(AWS)は固定か変動かを再検討
    • もし固定とするなら、AVCを増やす。例えば今後の昇給分を可変部分に組み込む。
    • エグゼクティブ、マネジャー、さらに雇用法や統一労働協約の対象になっていないスタッフについては、AWSを可変部分とすべき。
    • AWSが月給1カ月分を超える場合は、超過部分を可変部分とすべき。
  4. MVCの組み込み
    • 月給に占めるMVC比率を!0%に引き上げる。一部は基本賃金から転換し、一部は昇給分を組み込む手法を取る。
  5. 昇給幅は業績次第で柔軟に決定
    • 使用者と労働組合が統一労働協約を締結する場合、将来の昇給幅をあらかじめ設定してはならない。企業は業績、生産性、市場条件などの経営環境と全国賃金理事会(NWC)のガイドラインに沿って賃上げを検討すべき。
    • 無理な賃上げはしない。グローバルな競争による賃金圧力がかかった場合は賃金水準を再検討する。
  6. 同一職種の賃金格差縮小
    • 年功型賃金から能力・成果主義賃金へ転換。同一クラスの賃金格差を最大1.5倍に収める。

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