英労組、サービス業の海外移転を容認

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年5月

バークレー、ロイズ、HSBCといった大手銀行がコールセンター業務を海外に移すなど、国内サービス業における業務の海外移転、いわゆるオフショア化の傾向が進展している。

英国労働組合会議(TUC)は国内雇用に配慮しつつも、低賃金国など海外に業務が移転されることに対しては容認の姿勢を示している。(注1)TUC書記長ブレンダン・バーバーは、企業は短期的な利益のみを追求するのではなく、顧客サービスの悪化といった中長期的な問題を考慮した上で、業務の海外移転を行うべきだと主張した。その上で、グローバル化の中でオフショア化は不可避であるとして、英国内のサービス部門において、熟練した価値のある新たな職を生み出すために、政府および使用者との協議を続けると述べた。バーバー書記長の発言は、労働運動は保護貿易主義に走るべきではないと主張する、民間最大労組であるアミカス(Amicus)にも支持されるなど、金融・サービス界を中心とした労組リーダーらはオフショア化の動きを受け入れ始めている。

一方、オフショア化について同様の問題を抱える米国の対応は、英国の対応とは大きく異なったものだ。米国では、雇用問題が今秋の大統領選における最大の論点となっている中、公共部門の職の海外移転に対して規制を設けている州があるほか、上院においても同様の法案が議論されるなど、国内の雇用を守ろうとする動きが強い。これとは対照的に英国政府は、海外移転を抑制する新法の制定に否定的であるほか、政労使が協調してこの問題に取り組もうとする姿勢が見られる(注2)。

このことは1998年からの失業率の推移を見た場合、米国は上昇傾向にあるのに対し、英国の失業率が低く推移していることに加え、インドとの関係が英米間で異なることも起因していると考えられる。英国ではコールセンターといった補助的業務を中心にインドへのオフショア化の問題が議論されているのに対し、米国ではソフト開発部門でのインドの強さは、IT産業における米国の優位性を脅かすものとして捉えられている。

失業率の推移

図:1998年から2004年3月の失業率の推移

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