テルストラ社がソフトウェア開発の一部をインドに外部委託

カテゴリー:雇用・失業問題

オーストラリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2004年4月

主要電気通信会社の1つであるテルストラ社がソフトウェア開発の一部をインドに国外移転するという決定を行ったことから、この問題が大きな波紋を呼んでいる。これまでグローバル化をめぐる問題といえば、それほど技能を要さない労働が低賃金国に流出し、国内の雇用機会が減少するということであった。高技能職の流出が問題にされることは少なく、むしろグローバリゼーションのなかで国の競争力を高めるためには、教育訓練を通じた高技能職や高度先端技術への投資が必要であると考えられてきた。そのためソフトウェア開発の一部をインドに外部委託するというテルストラ社の決定が、大きな懸念を引き起こしたのである。

テルストラ社の計画内容

テルストラ社は、9億6700万豪ドルの経費削減を目標に掲げ、その一環としてまず手始めに450人分の雇用をインドに移転すると公表した。今後数年間に、合わせて1500人分のソフトウェア開発業務がインドに移転されることとなるという。

ところが国内での批判が高まるにつれ、同社の業務委託の詳細が次第に明らかとなってきた。その内容は若干複雑で、実際にはまずテルストラ社がIBM社に業務を委託し、IBM社がテルストラ社の低コストの希望を満たすためにインドに同業務を委託したというものであった。したがって、テルストラ社の主張では、インドへの外部委託は同社自身の決断ではないということになる。さらにIBM社は、2003年に同じような契約をめぐりライバル社との争いに負けたことから、労働コスト削減のためにインドに業務委託を行う必要に迫られていたと語っている。

政府の反応

テルストラ社については、一部民営化されたとはいえ、現時点でもその51%を政府が出資しているため、政府の立場は非常に微妙である。労働組合や野党は、海外への業務委託を中止させるために政府が同社へ働きかけるよう求めた。これを受けてコステロ財務省長官は、同社に対しこの計画を慎重に再検討するよう警告した。しかしながら、同社はIBM社の決定であるとの立場を崩していない。ところがその後、政府が同計画を最初から知っていたことが明らかになり、その批判を撤回せざるをえなくなった。財務省長官はこの問題に対する回答を拒否し、結局この問題は政府部内でたらい回しにされた。

今回の事件はいくつかの事柄を浮き彫りにした。まず政府が国民を欺こうとしたことであり、また政府の情報管理体制の不備も明らかとなった。ただ、それを鋭く追及するはずのメディアも非常に力不足であった。

ただ、政府が海外への業務委託計画を支持していたとしても、それは驚くべきことではない。というのは、以前にも政府は、コールセンター業務のインドへの移転を企業に奨励したとして非難されたことがあるからである。

2004年4月 オーストラリアの記事一覧

関連情報