自由貿易協定(FTA)が直接投資(FDI)・労働市場に及ぼす影響

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2004年3月

タイ・マレーシア・フィリピンの3カ国(東南アジア諸国連合:ASEAN)と日本は2003年12月11日、自由貿易協定(FTA)の交渉を開始することで合意した。日泰間貿易での最大の焦点は農産物の取引となると思われるが、FTA交渉が合意後、直接投資(FDI)と労働市場がどのように変化するかは非常に重要な問題になると思われる。

ASEAN閣僚会議でFTA交渉開始

上記三カ国首脳と小泉首相は、会談において、日本とFTAの政府交渉開始を2004年から交渉を開始することで12月11日に合意にした。日本とASEANとの貿易は、2002年1月にすでにFTAを締結したシンガポールを含めて、貿易額の75%を占める。この3カ国との調印が締結した場合、自由貿易圏が成立することになる。

日泰間貿易協定

12月11日、訪日中のタクシン首相は東京の首相官邸にて小泉首相と会談し、2004年早々からの政府間交渉を行うことで合意した。早ければ2004年半ばまでの締結が目標とされている。日泰間の自由貿易は、2003年6月から本格的に開始されたが、最大の障害である農産物貿易(特に米、鶏肉)の関税撤廃議論をめぐって両国の合意には達しなかった。

ただし、このような協定の場合、交渉内容はサービスや投資にも及ぶため、海外からの人材流入に消極的な日本と、送り出しに積極的なタイとの間で交渉も行われる。

投資間の協定に関しては、今後の投資条件の緩和や優遇制度により直接投資が増加し、雇用創出も期待できる。しかし、単純な期待論は危険だと経営側の専門家は見ている。なぜなら、投資先がタイではなく、中国やミャンマーなどに移転しつつあるからである。専門家は、今後タイが近隣諸国との競争を行うにあたり、いくつかの問題点を指摘している。

例えば、政府の掲げる労働者象と現実の労働者とのズレ・ギャップの問題点、FTA締結後、重点を置く産業とそうでない産業とを選定する必要性、また農産物などの産業で「競争」ではなく「連携」を目指していくことなどを挙げている。

また労働市場に関しても、労働者の解雇や賃金低下を引き起こさずに、低コスト戦略で生き残っていくためにはどうすればいいのかを真剣に考える時期を迎えている、と述べている。

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