過去10年で最も多い年間レイオフ警告数

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年3月

2003年9月まで、労働市場庁(AMS)と経済専門家の大部分は景気回復を予想していた。しかし経済状況は好転せず、レイオフ警告数は増加しつつある。2003年11月のレイオフ警告数は7279人で、2003年のレイオフ警告数は7万人を上回ることになる。また2003年11月の公開失業率は5.1%であった。すなわち、職を持たず、積極的労働市場政策に参加していない求職者が22万人いる

AMSは2004年に雇用情勢がさらに悪化すると見ており、積極的労働市場政策予算の20億クローネ(注1)増額を要求している。この予算により、労働者訓練、再訓練のほか、公共事業の前倒し実施、中小企業に対する補助金、低利貸し付けなどを計画している。

不況期には、公共部門における雇用創出が期待されるが、現在、地方政府は財政赤字を抱えており、雇用拡大は期待できない。多くの地方政府は、離職率の高いケア部門などで採用を手控え、自然減による人員削減を行っている。

民間部門のなかで、特に深刻な状況になっているのは工業部門に部品を納入する下請け企業である。発展途上国で低賃金労働者を雇用する企業との競争に敗れ、多くの企業が倒産した。零細企業だけではなく、より規模の大きな下請け企業も経営は苦しい。

AMSプログラムの拡充とは別に、社会民主党政権と同党を支持する2政党は、訓練されたケア部門の労働者が足りないものの、雇用を増やす予算がない地方政府に対する補助金増額について議論している。検討されている予算規模は地方政府に対する支援として20億クローネと、中小企業支援10億クローネである。

スウェーデン企業連盟は、2004年に国内総生産(GDP)の1.8%成長、2005年に2%成長と、2003年の1.4%成長を上回る成長を予想している。しかし、失業は今後増加すると見込んでいる。2002年から2003年の2年間に生産性が3.5%上昇したため、工業部門における雇用が減少しても生産を増加させることが可能であった。産業ロボットの利用も進んでいる。産業界が失業の増加を予測しているため、たとえ生産が増えても雇用の増加が伴わないという状況が続くのではないかと懸念される。

失業が問題になっている一方で、スウェーデン企業連盟によれば、有能な人材を確保できない企業が多い。同連盟に加盟している企業の22%が、有能な人材が不足していたため、受けた注文を断らざるをえなかった。仕事に空きがあるにもかかわらず、失業している人々を減らすために、AMSが職業訓練予算の増額を求めていることはもっともである。

建設業労働者労組は、AMSが積極的労働市場政策を拡充しなければ、2004年冬には建設業労働者の失業率は20%に達すると予想している。同労組はストックホルム中心部を通る鉄道増設工事早期実施を歓迎している。しかし、1990年代中ごろに実施された、より労働集約的で、使用者に対する税控除を伴っていたROT(修繕、改築、伸張)プログラムの再開を同労組は求めている。

レイオフ警告数
1990年 50,053
1991年 145,758
1992年 185,264
1993年 121,570
1994年 38,133
1995年 43,014
1996年 57,015
1997年 44,342
1998年 36,271
1999年 36,368
2000年 28,486
2001年 68,610
2002年 67,150

レイオフ警告された労働者すべてが実際に解雇されるわけではないが、2003年のレイオフ警告数は7万人を上回り、1994年以降、最も多い。

雇用保障法で定められたレイオフ警告の最短期間は1カ月である。当該労働者の勤続年数により、レイオフを前もって予告すべき期間はさらに長くなる。

勤続年数 レイオフの予告が必要な期間
2年以上4年未満 2カ月
4年以上6年未満 3カ月
6年以上8年未満 4カ月
8年以上10年未満 5カ月
10年以上 6カ月 6カ月

使用者の扱う業務量が少ないため解雇された労働者は、以前に雇用されていた職場に優先的に再雇用される権利を持つ。この権利は、有期雇用労働者にも与えられる。しかし、この優先権を得るためには、過去3年のうち計12カ月以上を解雇された会社で働いており、職務を遂行する十分な技能を持っていることが前提となる。

解雇における優先順位

労働者を解雇する必要が生じた場合、共同決定法により、使用者は労働組合と交渉する義務を負う。この交渉において重要となるのは、雇用保障法に沿って、解雇対象となる労働者について優先順位をつけることである。優先順位をつける前に、10人以下の従業員しか雇用していない使用者は、使用者にとって最も重要な労働者を2人まで解雇対象から外すことができる。もしも使用者が数種類の事業部門を持つ場合、各部門で別々に優先順位を設定しなければならない。またブルーカラー、ホワイトカラーといった交渉主体別に異なる雇用保障を提供している場合には、交渉主体別に特別の優先順位を設定する。勤続年数の長い従業員は、勤続年数の短い従業員よりも雇用継続に関する優先権を持つ。また勤続年数が同じ従業員の間では、年長の従業員が雇用継続に関する優先権を持つ。

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