海外出稼ぎ労働者(TKIs)の保護をめぐる国際ワークショップ開催

カテゴリー:外国人労働者労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年3月

ここ数カ月間激しい議論が交わされている海外出稼ぎ労働者(TKIs)の問題において、2003年12月に2つの国際的ワークショップが開催され、この問題が国際的にも関心の高いトピックとなっているようだ。政府は早急で具体的な対策を求められる形となった。

女性労働者の権利を守るためのワークショップ

2003年12月9~11日に開催された国際ワークショップでは、海外出稼ぎを行う女性の権利保護について激しい議論が交わされた。ワークショップは労働・移住省と国連女性開発基金(UNIFEM)が主催し、特に国連条約である「女性に対する差別撤廃に関する条約(CEDAW)」の批准に焦点が当てられた。

CEDAW委員会のメンバーであるアクマド女史は、国際的な条約の施行と国内的な法律への理解が労働者を助けることにつながり、出稼ぎ労働者の保護という観点からは、法的な枠組みを構築するだけでなく、地域的または2国間での協力が必要不可欠になる、と話している。

今回のワークショップでは主に出稼ぎ労働者の送り出し国であるインドネシアやフィリピン、スリランカ、ネパールといった政府の代表者が参加した。一方、受け入れ国であるマレーシアやサウジアラビア、シンガポールなどの国々からの参加はなかった。

NGOもバーレーン、バングラデシュ、ヨルダン、韓国などの国々からの参加が多かった。

UNIFEMのチュンギャルパ地域事務局長は冒頭のスピーチのなかで、アジア諸国で2000万人いるとされる女性出稼ぎ労働者のうち、半数以上が搾取と深刻な虐待に悩まされているという現実を挙げ、彼女らが人権まで奪われかねない危機的な状況にあることを訴え、早急な対処を考える必要性を強調した。

アジア諸国の女性出稼ぎ労働者は、2002年800億米ドルの仕送りを祖国に送っており、これは当該国の直接投資(FDI)をしのぐ額となっている。

インドネシアの場合、ILOジャカルタ支局のボルトン支局長の報告によれば、インドネシアに年間11億~22億米ドルの外資をもたらす出稼ぎ労働者が、労働者の人権を剥奪されていることに遺憾の意を表している。また、インドネシアではここ10年間で急激に海外出稼ぎ労働者が増加しているという背景にもかかわらず、適切な労働者保護政策がとられていないことにも疑問を呈した。

そのコメントを受け、労働・移住省の海外出稼ぎ担当グスティ局長は、政府は出稼ぎ労働者の保護に対して多大な努力を払ってきたことを強調し、2002年には48万人を海外に無事に送り出した実績があるとコメントしている。

労組・NGO中心の国際ワークショップ

近年頻発している出稼ぎ労働者問題を議論する目的で、12月15~17日の3日間、出稼ぎ労働者組合とNGO主催のワークショップがジャカルタで開催された。

主催団体は、インドネシア出稼ぎ労働者保護協会(Kopbumi)、香港のNGOであるアジアン・マイグラント・センター(AMC)、再統合のためのインドネシア委員会(Icore)の3つで、参加したNGOは133に上った。

Kopbumiのワユ代表は、政府の政策の不足と、労働者保護に関する国際条約の批准が緊急課題だとし、それと同時に韓国や香港、日本、マレーシア、シンガポール、中東などで起こっている労働者の問題を詳細に調査する必要があるとも述べている。現在話題になっている中東の出稼ぎ問題だけではなく、多くのインドネシア人が滞在している韓国でも強制帰国の通達を受けるインドネシア人労働者が増えているという。

先進国の書類ベースの雇用契約を読むことができないために起こるトラブルも多発しており、現地で労働者をサポートする体制が緊急に必要であるとの意見で一致した。

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