労使紛争解決法案がついに国会で可決、迅速な紛争解決に貢献なるか

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  • 国別労働トピック:2004年3月

労働関連の3法案のなかで、最後の課題となっていた労使紛争解決法案が、3年間の議論の末、2003年12月16日の国会で可決した。従来の長期にわたる地方・中央の労働委員会を介しての仲裁から、労働裁判所を介しての短期間の解決が期待されている。

労働関連3法、ようやく成立

2003年12月16日に開かれた国会本会議において、労使紛争解決法案(RUU Penyelesaisan Perselisihan Hubungan Industrial)が可決し、3年間の労使の議論が決着した形となった。この法案は、1957年労働大臣通達第22号と、64年労働大臣通達第24号の代替となる。

労使紛争を速やかに解決する方策として打ち出された労使紛争解決法案は、2003年4月にも成立が見込まれていたが、2003年6月末の労働・人口問題担当の国会第7委員会における労使の協議で、法案の全面的な見直しが労使での合意に達し、成立が延期された。

従来労使紛争が起きた場合には、地方および中央労使紛争解決委員会(それぞれP4D、P4P)を仲介させ解決を行ってきたが、今回可決された法案の下では、労使紛争の処理はすべて新設される労働裁判所を介して行われることになっている(労働法と労使紛争解決法の成立過程に関する動きは海外労働時報2001年4月号2002年910月号2003年13月号を参照)。

法案の具体的な内容

本法案は全9章、125条からなり、第1章第1節にて「労使紛争」の定義を行っている。そのなかで労使紛争とは、

  1. 一企業内における労働組合間の紛争、
  2. 雇用関係の終了に関する紛争、
  3. 利益に関する紛争、
  4. 権利に関する紛争、
  5. 上記のような紛争に起因する経営者あるいは経営者団体と、労働者あるいは労働組合との間の対立または意見の相違、

と解説されている。

法案では、労使紛争が起きた際には、

  1. 労働者あるいは労働組合と企業との間での話し合いを行い、30日以内の解決を図る、
  2. 1.で解決しなかった場合は、仲介者を介しての協議を30日以内に行う、
  3. 調停によって最長44日以内の解決を図り、
  4. 3.で解決に至らず、どちらかが裁定に従わなかった場合、もう一方が労働裁判所に提訴を行う、
  5. 地方の労働裁判所での1審は50日以内の裁定、
  6. 最高裁判所での2審は30日以内に裁定が下され、早ければ紛争勃発から6カ月程度で紛争が解決される

仕組みとなっている。

法案成立後の労使の反応

インドネシア経営者協会(Apindo)のジマント事務局長は、同法案の成立に歓迎の意を表明した。かねてから労使紛争の多発と長期化による外資導入への障害を懸念していた同局長だけに、今回の法案の可決により、外資導入に弾みがつくことを期待しているとコメントしている。また、基本的には、紛争解決を単純に裁判所に持ち込むのではなく、できるだけ労使間での話し合いを重視し、解決の方向へ導くことが望ましいとも述べている。

一方、労組側から同法案に関する反対のデモやキャンペーンなどは起きておらず、概ね賛成とみられている。

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