金属業界の賃金協約交渉開始

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年3月

例年どおり主要産別労組の2004年度の賃金協約交渉の先頭を切って、金属業界で2003年12月15日、金属連盟とIGメタルの間で協約交渉が開始された。この協約交渉は、2003年の東独地域の週35時聞労働をめぐるストの全面敗北(海外労働時報2003年9月号参照)後の初めての交渉であり、しかも、この敗北の責任を問われたが、結局委員長に就任した強硬派のペータース氏(2003年10月ドイツ労働情報参照)の下での初めての交渉で、各方面から注目されている。

IGメタルは、業界350万人の究働者のために、すでに賃上げ要求4%を11月27日に決定していたが、交渉でこの要求を打ち出すとともに、賃金協約の有効期間として12カ月を要求している。今回の賃上げ要求は、ストに発展して大いにもめた2002年の賃上げ要求6.5%より低い額であり、同労組は要求額の根底に、生産性向上2%、インフレ率1.3%を据えている。また同労組は、2004年の交渉で締結された労働者(Arbeiter)と職員(Angestellte)の給与格差を解消するための報酬基本労働協約(ERA:Entgeltrahmentarifvertrag)(注1)のコストに当てる基金の積み立てに、賃上げ額の1.4%を当てることについては、すでに金属連盟側と合意している。

これに対して金属連盟は、2002年の賃金協約締結以来、すでに10万人が失職したことを挙げ、生産性の向上の範囲内で最大1.4%の賃上げに応じるとしており、代表的経済研究所の許容する賃上げ幅も1.4%であることを指摘している。

この賃上げをめぐる交渉のほかに、2004年度の交渉では使用者側が、賃金協約の取り決めで事業所レベルの労働時間に弾力性を持たせるようにすることを、交渉の中心テーマにすることを要求している。すなわち、ドイツでは最近特に労働時間の延長が論議されており、有力企業でこの方針を打ち出したものもあるが、賃金協約交渉の先頭を切る金属業界で、金属連盟がこの労働時間の延長も視野に入れて、IGメタルとの交渉で各企業(事業所)ごとの業績に応じた労働時間の決定に、開放条項(Offnungsklausel)を通して道を開く賃金協約の弾力化を中心議題にすることを要求しているのである。

これに対して、IGメタル側は交渉前から交渉を賃上げ交渉に絞ることを主張していたが、ぺータース委員長は金属連盟の主張するそのような開放条項を拒否している。同委員長は、開放条項で現在の週35時間労働枠から離れて、賃金調整を伴わない週35~40時間の労働時間帯(Areitszeitkorridor)が設けられることには断固反対するとしている。

ただ同委員長は、すべての弾力化に反対するのではなく、労働時間口座(Arbeitszeitkonten)を利用して、労働時間の延長を積み立てる方式での弾力化に応じる可能性は認めている。だがそのためには、使用者側が企業の倒産に際して労働時間口座を保証することが前提だともしている。

この金属業界の協約交渉で問題になっている賃金協約の開放条項の利用については、現在ドイツの労使間、与野党間で開放条項の立法化も含めて激しく議論されている重要な議題であり、労働問題専門家の多くも、企業(事業所)レベルでの賃金・労働時間の決定幅を拡大するために、開放条項の利用による賃金協約の弾力化の必要性を認めている。

そしてこの問題につき、11月には主要使用者団体と労組の間で議論がなされたが、12月初めに話し合いはいったん決裂し、シュレーダー首相が解決を求めて労使双方にさらに働きかけている。したがって、最有力労組IGメタルがかかわる金属業界の交渉の進展は、背後にある労使全体、与野党の議論との関係でも、今後の進躍が注目される。

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