男女間の賃金格差、縮小

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年2月

2003年12月に発表された国家統計局の調査報告によると、現在、男女間の賃金格差は18%で、1991年に現在の方式で統計を取り始めて以来、最小となった。2002年度の男性の賃金(時給)上昇率が1.1%だったのに対して女性は3.5%であったことによると統計局は説明している。女性の平均賃金も初めて2万ポンドに達した。

特に格差の縮小が目立ったのは、パートタイム労働者である。女性の場合、賃金は3.5%上昇して週給150ポンドになったのに対して、男性は1%低下して同163ポンドに下がった。つまりパートタイム労働者の場合、男女間賃金格差はわずか8%で、13%あった2001年度からさらに縮小した。パートタイム労働者はこの1年間に10万人以上が採用され、逆にフルタイム労働者は2万9000人減少しただけに、今回の結果が全体に及ぼす影響は大きい。

しかし男女間賃金格差の解消を主張する人々からは、今回の結果に対して、格差の縮小に時間がかかりすぎているとの失望の声も聞かれる。2001会計年度から1%ポイントしか低下しておらず、このペースでいけば、賃金格差が完全に解消するには数十年かかることになるためだ。男女間の同一賃金を提唱するキャンペーン団体、フォーセット協会のカトリーヌ・レイク理事の計算によれば、ここ5年間のペースで格差が縮小する場合、男女のフルタイム労働者の格差が完全に解消するには85年かかるという。

今回、わずかに縮小したものの、業種によっては未だに格差は大きい。ペイファインダー・コムの調べによると、最も格差の大きい金融業では、男性の賃金水準は女性のそれよりも60%も高い。男女間賃金格差を不服とした女性トップバンカーによる訴訟によって、数百万ポンドの支払いがなされたケースなども見られる。

同調査によると、イギリスの主要な産業のうち12業種で、男性の賃金が女性のそれより最低でも30%高い。販売など「女性指向」の強い業種でも、男性の賃金は女性より50%高く、またかつての男性的イメージを払拭しようとしている広告業でも、平均的な男性従業員は女性より30%以上も多い賃金を得ている。法律や会計といった専門的サービスでは、格差はそれぞれ36%と24%との結果だった。

一方、女性のほうが男性よりも賃金が高い業種は、慈善事業と公共サービス(コールセンターを含む)で、女性は男性よりも18%多い賃金を得ている。

フォーセット協会は、男女間賃金格差の所在を明らかにするために、企業に賃金検査を実施することを義務づける法律を導入するよう政府に求めている。これに対してヒューイット貿易産業相は、賃金格差が縮小する適切な環境を提供するために労働市場での女性の選択肢と機会を改善していくという、現在の政府の方針を堅持すると述べている。育児支援やフレキシブルな就労形態の導入、また労働市場の基幹部分への女性の参加を促進することなどが、その方針だ。

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