製糖企業のスト鎮圧で、子供を含む7名が死亡

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年12月

労働雇用省(DOLE)の発表によれば、2004年1月から9月のストライキ発生件数は、19件。前年同期(37件)から約半減した。ストライキに参加した労働者数も、前年の9926人から4525人に減少。これを受けて、S.トマス労働雇用相は、「一般に『フィリピンはよくストライキが起こる国』と思われている。労働雇用省の目的はこの認識を変えていくことである」とコメントしていた。

こうしたなか、ターラック州にあるハシエンダ・ルイシタという製糖企業で、11月16日、ストライキをしていた労働者と、鎮圧のために出動した国家警察(PNP)・国軍が衝突、7人が死亡、100人以上の負傷者が出るという事件が起きた。ハシエンダ・ルイシタは、アキノ元大統領の親族が所有する企業。2003年には、1億5000万ペソの損失を計上し、赤字削減の一環として、2004年8月に従業員300人を一時解雇(レイオフ)する方針を発表していた。

労働協約(CBA)交渉の決裂を機に、ストライキは11月6日に開始。サトウキビ農場と工場で働く従業員約3000人が参加した。賃上げと待遇改善を要求する労組側に対し、経営者側は「ストは経営を麻痺させるもの」と主張。警察当局は、同社の警備強化を労働雇用省に要請し、この要請を受けた労働雇用省は、国軍を派遣した。

フィリピンでは、スト発生地域の安全確保のため、労働雇用省から国防省への救援要請が認められている。しかし今回のストでは、安全が確保されるどころか、警察と国軍による威嚇射撃と催涙ガスで、子供1人を含む計7人が死亡。ストライキ参加者だけでなく、警察、兵士、消防士からも多くの負傷者が出た。

こうした事態を受け、S.トマス労働雇用相は、今回の事件の経緯を明らかにする捜査に全面的に協力する意欲を表明。同時に、ストライキ鎮圧のために国軍を派遣したことが間違いであったと証明されれば、辞任する意向であることを明らかした。なお、アロヨ大統領は、負傷者や死亡者の家族への援助を関係機関に支持するに留まり、今回のストライキについては干渉しない立場を示している。

11月25日には、主要公共交通機関の労働者が、燃料価格の上昇に抗議。ストに突入した。「政府に譲歩を見出す時間を与えるため」に、午後にはストは中止されたが、交通機関は麻痺し、全国で多数の利用者に影響が出た。

S.トマス氏が目指す「『フィリピンはストライキがよく起こる国』という認識を変えること」は、容易ではなさそうだ。

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