フランス国鉄(SNCF)でストライキ回避に関する労使合意が成立

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年12月

フランス国鉄(SNCF)は、10月27日、ストライキ回避を目指した協約を主要な労働組合と締結した。この合意により、ストライキは、労使協議を行っても解決しなかった場合にのみに限られることとなる。労使紛争の際、交渉の前にまずストライキを行うのが一般的とされるフランスでは極めて異例のこの協約。ドゥ・ロビアン運輸相は、近代的労働争議システムへの移行に向けた「歴史的な合意」であると高く評価した。ラファラン首相も歓迎の意を表したが、労働総同盟・労働者の力派(CGT-FO)は、「政府がこうした合意をフランス全土の公共機関に強制する恐れがある」という危惧を示し、協約への署名を拒否した。

国鉄(SNCF)・地下鉄・バス・航空会社といった公共交通機関を始め、図書館・ゴミ収集などの公共サービス部門、さらには郵便局や大学など公務員のストライキが比較的頻繁に行われるフランス。特に公共交通機関のストライキは、他部門に比べ頻発している。さらに、その規模も当日まで判明せず、電車やバスが全面的に運休することもあり、利用者からは、「ラッシュ時に最低限の運行を義務付ける」等の改善策を求める声が高まっていた。

こうしたなか、政府は2004年2月、専門家委員会を設置。労働組合や使用者(フランス国鉄当局等)、利用者団体などを交えて、公共交通機関のストライキ実施時の混乱軽減策を協議し、7月21日には、「新たな法規制を設け、労使闘争を最大限回避させるべきである」とする報告書を、ドゥ・ロビアン運輸相に提出した。同報告書には、ストライキ回避に重点を置いた対策やストライキ予告義務の前倒しなどが盛り込まれていた。専門家委員会からは、「ストライキ予告義務を現行の5日前から10日前に前倒し、このうち7日間は労使交渉に充て、ストライキ決行の場合は、残る3日間で利用者への情報提供の準備を行う」「運転士など運行に直接携わる従業員には、48時間前までにストライキ参加について個別に当局へ通告させることなどにより、運行可能本数を事前に把握する」といった提言がなされた。

専門家委員会の提言をうけ、9月には、同運輸相の呼びかけで、関係者協議を開始。当初、ストライキ権の侵害につながりかねないとして反発していたフランス国鉄(SNCF)の労働組合も、ストライキ時の最低限サービス(運行)の法制化を恐れて歩み寄りをみせ、10月27日、ストライキを回避する協約を国鉄当局と締結した。

労使紛争では交渉の前にストライキを実行するのが通例とされてきたフランス。その背景には、「ストライキは、労働者が経営陣に対抗できる重要な手段である」という認識が存在する。しかし、フランス国鉄(SNCF)において締結された今回の合意では、この認識を変え、「労使双方が対話による解決を重視する」ことでストライキの回数を減少させることを目指している。今後、問題発生時には、10日間の緊急協議(concertation immediate)を行ない、それで解決しなかった場合のみストライキ通告がなされることになる。また、最低限の運行を義務付けてはいないが、ストライキの際の運行状況に関する情報提供の改善についても合意がなされた。

この協約に署名したのは、労働総同盟(CGT)、フランス民主労働同盟(CFDT)、フランスキリスト教労働同盟(CFTC)、フランス幹部職総同盟(CGC)、独立組合全国連合(UNSA)、上級管理職全国組合(SNCS)、運転士自治総連盟(FGAAC)の7労組。労働総同盟・労働者の力派(CGT-FO)と連帯・統一・民主・鉄道員労働組合連盟(Sud-Rail)の2労組は、同意しなかった。

フランス国鉄(SNCF)における最大の労働組合である労働総同盟(CGT)の執行委員会では、この協約に対して、賛成66票、反対は、僅か1票であった。CGT国鉄の総書記、ル・レスト氏は、この協約を評価。しかし、最低限の運行を法律によって義務付けることなどによる、ストライキ権の見直しには反対する意向であることを強調した。

労働総同盟・労働者の力派(CGT-FO)は、この協約に署名しなかった理由として、10日間の協議期間の間に、経営側がストライキを断念するよう圧力をかける恐れがあるとしている。さらに、CGT-FO国鉄総書記のファランパン氏は、「政府が、このような合意を、フランス全土の公共交通機関に強制する恐れがある」という危惧を示した。

この合意は、10月29日朝に発効し、特に期限は設けられていない。また、中央・地方の両レベルで適用される。

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