議論が続く「時長」
―35時間労働制の見直し

カテゴリー:労働法・働くルール労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年11月

ラファラン首相やサルコジー経済相がヴァカンス前に打ち出した「労働時間短縮関連法の見直し」を受け、ラルシェ労働関係担当相は、35時間労働制の緩和等に関して、労働組合や経営者団体度の幹部と相次いで協議した。組合側が、「見直し反対」の姿勢を改めて表明したのに対し、経営者団体・MEDEFのセリエール会長は、同相に「見直しの申し入れ」を行った。また、ボルロー雇用・社会統合相は、同制度の「一部見直し」を改めて主張。今後も協議を重ね、ラファラン首相は12月末までに、35時間労働制の柔軟運用の詳細に関する結論を出す予定だ。

ラルシェ労働関係担当相による労使の聴聞

フランス民主労働同盟(CFDT)のシェレーク総書記は、ラルシェ労働関係担当相との会談で、「35時間労働制は、数十万人の雇用を生み出し、経済成長の足かせとはなっていない」と主張。同制度の見直しには反対の立場を表明した。しかし同時に、産業別あるいは企業別の労働時間短縮に関する柔軟運用の交渉については反対しているわけではないことも強調。ボッシュ社が勤務時間を週35時間から36時間に変更した例を引き合いに出し、経済的困難に直面した企業では、「時長」の合意に至ったことに言及した。この点については、CFDTは他の労働組合と一線を画している。

ラルシェ労働関係担当相はその後も、複数の労働組合ナショナルセンターのトップと雇用政策に関して意見交換を行った。管理職組合総連盟(CGC)のカゼット会長は、35時間労働制の若干の修正には理解を示しながらも、「企業と従業員が、労働組合抜きで直接交渉することは受け入れられない」とし、そのような場合には、更なる労働者の保護規定が必要であるという見解を示した。労働者の力派 (CGT-FO)のメイリー総書記は、35時間労働制の見直しは、経済的・社会的必要性に基づくものではなく、政治的判断であると断言。政府の姿勢を非難した。さらに、労働総同盟(CGT)のティボー総書記は、今でも400万人が35時間労働制へ移行していないとし、35時間労働制を完全適用の実現を主張した。

一方、経営者団体のフランス企業運動(MEDEF)のセリエール会長は、ラルシェ労働関係担当相に対して、「35時間労働制の見直し」を改めて求めた。それと同時に、労働時間や時間外労働に対する報酬、パートタイム労働の労働条件の詳細などを従業員と決定する自由を、企業に与えることを要求した。

閣僚による議論

ドゥヴディアン産業担当相は、フィガロ誌の中で、「35時間労働制は、一つの権利であるが、義務であるべきでない。35時間労働制は、産業や国家財政にとって有意義でないことは明らかで、将来的には、選択肢の1つであるべき」と主張。一方、雇用・労働・社会統合相のボルロー氏は、35時間労働制の柔軟運用に関して、時間外労働の許可時間の拡大や産業別の協議を促進させる考えを明らかにし、同制度の改正は、一部にとどめるべきであるとの立場を改めて鮮明にした。同相は、「35時間労働制は、社会に定着しており、企業でもそれを前提に組織が構成されている。つまり、時短は、既に経済的前提となっている。同制度の全面廃止など急進的な改革を行えば、フランス経済を混乱させることになり、そういう事態は避けなければならない」と指摘した。

今後の予定

35時間労働制の見直しについて、ラルシェ労働関係担当相は、今後も労働組合などと協議を重ねる。11月半ばを目処に、ボルロー雇用・労働・社会統合相が、同制度の見直し点を明らかにさせる予定である。その後、ラファラン首相が、12月末までに、35時間労働制の柔軟運用の詳細に関する結論を出すことにしている。

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