情報技術産業(IT)従事者の現状

カテゴリー:労働条件・就業環境統計

台湾の記事一覧

  • 国別労働トピック:2004年10月

行政院労工委員会(CLA)が実施した2003年~2004年「業種別賃金調査」によれば、情報技術(IT)産業に従事する労働者数は約58万5600人となっている。そのうち、90%が製造部門従事者、10%がサービス部門従事者である。全製造企業に対するコンピュータ・通信・ビジュアルオーディオ製品メーカーの比率は42%以上、従業員数500人を超える電子部品メーカーは51%以上となっている。製造企業の人員構成を見ると、従業員の11%が役員・取締役、17%が専門職、15%が技術職及び準専門職となっている。

サービス関連企業にするコンピュータシステム設計サービス会社の比率は約31%、従業員数29人以下のデータ処理・情報提供サービス会社は63%以上となっている。しかしながら、サービス関連企業の人員構成を見ると、従業員の33%から36%が役員・取締役、16%から47%が専門職、24%から29%が技術職及び準専門職となっている。以上のことから、IT産業、特にサービス部門における人員構成は、他の産業と比較して専門職と技術職の比率が高いことがわかる。

従って、IT産業従事者の学歴(大半が修士号又は学士号を取得)と月収は高いのが普通である。上述の2003年~2004年「業種別賃金調査」によると、IT産業従事者の平均月収は3万5542新台湾ドル(2003年7月現在)であり、全製造企業の平均月収より3,537新台湾ドル高くなっている。一方、コンピュータシステム設計サービス会社の平均月収は4万6847新台湾ドルで、会計、コンサルタント、広告宣伝会社などを含む、全サービス関連企業の平均月収より1905新台湾ドル高くなっている。しかしながら、データ処理・情報提供サービス会社の従業員の平均月収は3万7283新台湾ドルにとどまり、平均月収を下回っている。

以上のような賃金状況にもかかわらず、ジョブバンクが今年7月に実施した調査によれば、IT専門家の60%以上は、自分の給与水準は「平均的である」もしくは「満足している」と考えている。同調査によれば、IT産業従事者の47.5%が自分の給与水準は「平均的である」、13.29%が「満足している」と感じている。一方、自分の給与水準に満足していないと感じているIT産業従事者は39.3%となっている。さらに、52.2%が証券投資を行なっていると答えており、49.6%が金融機関に定期預金を保有しているという。

以上のことから、IT産業従事者は高い収入を得るとともに、個人財産運用を行なっているのが一般的であるといえる。特に役員・取締役の平均月収は、IT産業従事者の約2倍、技術職及びその他の専門職の約125%となっている。さらに、IT関連企業の大半は利益分配制度を導入し、特に大企業では従業員持ち株制度が確立されており、IT産業従事者の過半数が、自分の月収は平均的であるもしくは満足していると感じ、証券投資を行なっていると答えていることは当然であるといえる。

それに対して、IT産業における週当たりの労働日数を見ると、コンピュータ・通信・オーディオビジュアル製品メーカーの場合、約74%が週5日労働制を採用し、15%が土曜労働制を弾力的に採用しており、週6日労働制を採用しているメーカーは約2%に過ぎない。電子部品メーカーの場合、約59%が週5日労働制を採用し、19%が土曜労働制を弾力的に採用しており、週6日労働制を採用しているメーカーは9%となっている。

さらに、通常の週当たり労働時間を見ると、コンピュータ・通信・電子製品メーカーの約78%が週当たり通常労働時間を40時間から42時間、ITサービス関連企業の約69%から74%が40時間としている。当然ではあるが、IT企業が定めている通常労働時間はいずれも、週当たり労働時間を2週通算で84時間以内とする現行の労働基準法に基づく標準労働時間を超えるものではない。しかしながら、ITメーカーの約26%とITサービス関連企業の10%は、労働時間を延長せざるを得ない状況にある。さらに、ITメーカーの約11%は、現行の労働基準法に従わない労働時間制を採用している。統計には表れていないものの、取締役や専門職など多くのIT産業従事者は、任務を達成する上でやむを得ないことを理由に、規定の労働時間を超える労働を強いられていることは注目に値する。それは、IT企業の労働環境が、従業員に過大な労働を課さざるを得ないほど仕事量が多く、競争も激しい状況にあることを示すものである。

台湾のIT企業の成長は一般に、高度な知識と専門技術を備えた従業員に依存している。だからこそ、IT産業従事者は高い収入と満足を得ているのである。それが、IT産業において労使紛争の発生件数が少ない要因ともなっている。しかしその一方で、IT産業従事者は競争の激しい労働環境に直面しており、高度な情報システム能力を備えていることから、いわゆるモラルスタンダードの遵守を常に要求されている状況を考えると、他の業種と比較して、IT産業従事者の労働における精神的負担は大きいと言える。

2004年10月 台湾の記事一覧

関連情報