減少し続ける労働組合員

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年10月

英国の労働組合員数の減少に歯止めがかからない。このほど発表された『組合認証官(Certification Officer)報告2003-2004』によれば、2003年の組合員の減少数は、全体で1万6000人。1979年の1300万人をピークに減少し続けている。公共部門の雇用削減案が実行されれば、労働組合加入率は20%を下回る可能性もあり、米国の15%に近づきつつある。

組合員の減少数をTUC(英国組合会議)加盟労組に限定して見ると、その数は5万6000人であり減少幅はより大きい。逆にTUC非加盟労組では組合員数は増加しているという結果がでている。実は、非加盟労組組合員数の増加が、TUC加盟労組の組合員数の減少を補うという構造は長年に亘り続いている。全労働組合の組合員総数は、現在約773万6000人。組合員総数から非加盟労組組合員を差引いたTUC加盟労組の組合員数は、雇用者総数の約21%に過ぎない。TUC非加盟労組の多くが公共部門に属しており、労組加入率は長年50%以上を維持してきた。一方、TUCの組合員は従来から、製造業部門の従業員が多数を占め、失業率が高いのが特徴。この事実をふまえ、TUCは近年、公共部門労働組合の組合員数の増加を図る方策を進めているものの製造業部門における組合員数の大幅な減少によって、その努力が報われないという皮肉な状況が続いている。

政府が公共部門の雇用削減を目標に掲げていることから、今後TUC加盟労組とTUC非加盟労組はともに組合員数を減らすことになると予想される。従ってこれまでのように非加盟公共部門労組の組合員数の増加が、製造業部門に属するTUC加盟労組員数の減少を結果的に補うという構図には翳りがでてくるものと思われる。

財政基盤の弱体化

全組合員の中で組合費を納めていない者は12%に上る。その理由は離職、教育休暇、育児休暇、退職など。TUC加盟労組トップ14のうち11の労働組合における総支出は、総収入を大幅に上回っているなど、組合運営の財政は逼迫している。1970年以降、ストライキの減少に伴い、流動性の高い資産を維持する必要性が小さくなったことを受けて、組合資産の運用先は株式などにシフトされてきた。しかし、その後の株式市場の低迷により、期待された収益を得るには至らず、この結果全TUC加盟労組の純資産は0.2%しか増加していない。今後、組合員の減少が続けば、財政基盤はさらに弱体化することが必至と見られている。

英国上位16労組の組合員数
(上位16労組のうちRCNとBMAの2労組はTUCに未加盟)
1 公務部門労組(UNISON) 1289000
2 アミカス 1061551
3 輸送一般労組(TGWU) 835351
4 全国都市一般労組(GMB) 703970
5 王立看護師学校(RCN) 359739
6 全英教員組合(NUT) 331910
7 商店・流通・連合労働者組合(SDA) 321151
8 公務員組合(PCS) 285582
9 通信労働者組合(CWU) 266067
10 全国女性教員校長組合(NASUWT) 265219
11 英国教職員組合(ATL) 202585
12 金融関連組合(UNIFI) 147607
13 建設関連職技術者組合(UCATT) 115007
14 英国医療協会(BMA) 113711
15 プロスペクト 105480
16 グラフィカル・ペーパー・メディア組合 102088
1~16の合計 6056018

メモ

  • 英国において組合員数を把握するための公式統計には、既出の『組合認証官報告』のほかに、労働力調査における労働組合員統計がある。両者の調査方法は異なるため、数値は一致しない。

参考文献

  • 文中の数値等はAnnual Reports of the Certification Officer 2003-2004による

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