欧州評議会、建設業のクローズド・ショップ協定を批判

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年1月

欧州評議会(Council of Europe)の閣僚委員会は2003年9月24日、建設業の労働協約にクローズド・ショップ協定が存在し、非労働組合員を含む従業員全員から労働組合が「検査料」を源泉徴収していることをスウェーデンが容認しており、スウェーデンが批准した欧州社会権憲章(Social Charter)と欧州人権条約に違反しているという勧告を行った。

1949年に西欧10カ国が設立した欧州評議会には現在45カ国が加盟し、人権、民主主義、法の支配など西欧諸国が共有する価値観を実現するための活動を行っている。閣僚委員会は、加盟国の外相から構成される欧州評議会の意思決定機関で、条約や協定を作成し、加盟国政府に対して拘束力のない勧告を行う。

建設業の協約内容について、スウェーデン企業連盟は2002年4月、欧州評議会に申し立てを行った。建設業使用者団体の申し立ての内容は、労働者が採用される時に特定労組の組合員が優先的に採用されるクローズド・ショップ協定が同業界の協約に含まれていること、さらに、出来高払いが適正に支払われているかを労組の職場委員が調査するための検査料として非組合員を含む全員の賃金の1.5%が源泉徴収されていることが、労組に加入しない権利(negative right of association)を定めた欧州社会権憲章に違反しているというものである。

欧州評議会は、徴収された検査料が本来の目的どおりに使用されていれば問題ないとしているが、欧州評議会としては使途が適切かどうかまでは判断していない。欧州評議会は、スウェーデン政府に対し、建設業のクローズド・ショップ協定を禁止するよう要請した。

建設業使用者団体は、この件をスウェーデン労働裁判所で争い、すでに敗訴している。労働裁判所は、賃金から検査料を徴収することは、組合への強制加入と同等ではないと判断し、労組に加入しない権利を侵害していないとした。

同使用者団体は、労働者が組合に加入しない権利をスウェーデン政府が明確に法制化すべきであるとして、欧州裁判所にも提訴している。欧州裁判所は、この件を審議するかどうか、まだ決定していない。

スウェーデン企業連盟は、欧州評議会の決定を歓迎し、この分野に関する新法の制定を求めている。建設業労働者組合は、クローズド・ショップ協定は時代遅れであり、すでに撤廃されつつあるとし、検査料についても、出来高払いの実施状況を検査するために使われていれば容認されるという判断は、労組にとって有利な判断だという立場を明らかにした。労組は、スウェーデン労働裁判所ですでに判決が出た国内問題を欧州の機関に持ち込む使用者の戦略を批判する。労働法に関する実際の問題について経験の乏しい国際機関の法律専門家よりもスウェーデン労働裁判所判事のほうが正しい判断を下すと考える労組は、使用者が欧州の機関を使う理由は労組を弱体化させることにすぎないのではないかと疑っている。

労働者が採用される際に、実質上、すでに組合員であることを要求するクローズド・ショップ協定は、スウェーデンではほぼ建設業のみに存在する。建設業では、2003年8月現在、約4400の協約がクローズド・ショップ協定を含んでいる。2003年3月には約4900の協約がクローズド・ショップ協定を含んでいたが、中央の労組および使用者団体のトップが各地の建設業労使に同協定の廃止を呼びかけ、クローズド・ショップ協定を含む協約は着実に減少している。

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