APEC開催による不法出稼ぎ労働者の取り締まり強化

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2003年12月

2003年10月17~21日にバンコクで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議の治安維持と準備のため、政府は9月から市内の路上や野外で生活を行う不法滞在者と不法就労者を強制送還させる方針を打ち出した。

621人のカンボジア人物乞いや不法就労者を強制送還

APEC首脳会議の開催にあたり、警察関係者らは出入国の管理と治安維持対策として、ドムアン空港周辺の検問や積荷検査を厳重に実施。空港周辺の警備をこれほど厳重に行ったのは、「実に50年ぶり(軍関係者談)」ということだ。

また国内対策として、9月24日、バンコク市内に不法滞在する物乞いや不法就労者ら621人のカンボジア人が、軍用機であるC130およびG222機でプノンペンに強制送還された。不法滞在者の空路送還は初めてのことで、通常は陸路を使っての送還が行われている。カンボジア人に続き、ラオス人やミャンマー人も同様に強制送還を行う予定であるとのことである。

タイで働く外国人労働者

タイでは外国人を雇用する使用者に対して、地方の労働局に登録する義務がある。登録済みの外国人労働者は2001年は50万人、2002年は36万人となっている。しかし、これは1人当たりの登録料金が4400バーツ(注1)と非常に高く、使用者側が登録を怠っているという要因から、過小評価されている可能性がある。また、1997年の経済危機以後、タイ政府は失業率の悪化からタイ人優先の雇用政策を打ち出し、外国人労働者が就業できる業種を農業や建設業などを含む27業種に限定し、県別にその業種に就業できる人数を制限している。そのため、登録したくても制限数を超えてしまった外国人は「不法に」就労するしかないという背景がある。

外国人労働者に労働力を依存している北部や東北部の農業分野(特に精米業者)の使用者らは、これらの人数制限が非現実的な措置であることを繰り返し政府に訴えてきた。なぜなら、いわゆる3K労働にはタイ人の応募はほとんどなく、労働力不足は慢性化しており、外国人労働者に依存しなければ生産性にも影響するからである。

現在タイ国内で最も多い外国人就労者はミャンマー人で、約100万~200万人が滞在していると推測されている。次いで、ラオス人、カンボジア人、中国人などである。

不法就労の問題と治安・安全保障の問題は、共に議論される話題であるが、特にミャンマーやカンボジアはタイとの政治関係が安定していないため(1999年のミャンマー人の在タイ・ミャンマー大使館の立てこもり事件および2003年のカンボジア人の在カンボジア・タイ大使館の爆破事件など)、タイ政府が警戒を強めているというのが現状のようである。

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