スト後の地方政府ケア部門労働者、待遇改善進む

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年12月

大規模なストの末、地方自治体労働者労組(Kommunal)は、2003年5月28日に2年協約を締結し、1年目に3.95%の賃上げを、2年目に2.45%の賃上げを得た。3.95%賃上げのなかで、比較的賃金の低い准看護師などの賃上げを優先させ、最低賃金引き上げや、経験を積んだ准看護師に対する5%賃上げを取り決めている。

この協約の後、各地方自治体で労使交渉が行われ、2年協約の約6.5%の賃上げを大きく上回る8~9%の賃上げを実現している。大部分の地方政府が財政赤字を抱えており、合計で総額120億クローネ(注1)の赤字になっている。大部分の地方政府は、社会民主党と左派政党の連立与党の下で、増税を伴う財政再建に努めながらも、提供するサービスの質を確保しようとしている。特にケア部門労働者の人材確保は困難で、待遇を改善する必要がある。

地方政府のケア部門労働者やホームヘルパーの平均年齢は大変高く、Kommunal組合員の40%近くが50~65歳の年齢層に含まれる。ケア部門では、いずれ若い労働者を雇用する必要があるが、ケア部門労働者を育成する高等教育課程は若い人に不人気で、定員の半分程度しか学生がいない。そのため、各地方自治体は、能力の高い労働者を確保するためのケア部門労働者の待遇改善に前向きである。

これまでに全国で最も高い賃上げ率9%の2年協約を結んだ最北の鉱山都市キルナでは、賃金格差を拡大しがちな個別交渉を行わず、勤続年数、教育、職務に基づいて賃金を決定し、平均賃金は1万7000クローネである。Kommunalは、すべての従業員が少なくとも1200クローネの賃上げを得るように要求していたが、それは、ケア部門の看護補助者の最も高い賃金が月1万9000クローネになることを意味する。

キルナでは、ホームヘルプサービスで働く准看護師が週30時間の労働でフルタイム労働と同じ賃金を得ている。この特例は、政府が資金援助している実験的な時短の一環である。こうした時短制度を活用している准看護師の賃上げ幅は、フルタイム労働者の場合よりも300クローネ低くなっている。

キルナでは、社会民主党が野党で、与党は、社会民主党非主流派、旧共産党、環境党、自由党などから構成されている。キルナでは、Kommunalが(全国協約が5月28日に締結されたため)メーデーというスローガンの下、マスコミも動員して地方政治家に働きかけ、ほぼすべての政党・党派に属する政治家の合意を得て賃上げを実現した。全国では、しばしば旧共産党、環境党と連立を組む社会民主党が率いる地方政府すべてで同様の状況になっている。

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