2政府機関、傷病手当給付期間1年に短縮を提言

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年12月

国民社会保険局(NSIB)と労働市場庁(AMS)は、最近、傷病手当給付期間を最長1年に制限すべきであると提言した。スウェーデンのように傷病手当受給期間に上限を設けていない国は少ない。6カ月あるいは1年の傷病手当給付期間は、他の大部分の国で広く見られる。1年間に給付期間を制限すれば、1年に休養をとるだけでなく、受給者が次に何をするかを計画するように促すことができる。傷病手当は、傷病により労働能力が少なくとも4分の1低下した労働者に支払われ、その低下程度により全額、4分の3、2分の1、4分の1の給付を受ける。2003年7月1日以来、補償水準は所得の78%である。

傷病手当受給者は増加しており、経済の負担になっている。AMSは、労働市場における需給状態が改善すれば、より多くの労働力が必要になるため、それまでに傷病手当を受けている労働者の職場復帰を促したいと考えている。一方、NSIB長官は、傷病手当の給付期間を制限することにより、受給者の積極性を促すような制度に転換するべきだと発言している。

NSIBとAMSの提案によると、制度への移行は漸進的で、傷病手当受給期間が6カ月までの者を対象に行われる。このため、現在31万1000人以上の労働者が傷病手当を受けているが、そのうち約3万5000人のみが制度移行の対象になるとしている。

しかし政府はNSIBとAMSの提案について沈黙を保っている。政府は提案内容を現実的な政策変更と見なしているかもしれないが、2006年9月に予定されている総選挙への影響を考えると、実行時期を慎重に選択しなければならない問題であるためであろう。

傷病手当受給者の増減は、傷病手当の制度変更と景気循環の2つによって主に説明できる。1990年代初めの受給者減少は、93年の待機日の導入や傷病手当の給付条件の厳格化と失業率の上昇によってもたらされた。対照的に1997年以来、景気拡大により、受給者が急激に増加した。これは不況期(93~97年)の傷病期間が97年以降に先送りされた可能性を示唆している。

2003年7月1日より、雇用者については、傷病期間の最初の2週間ではなく、3週間まで使用者が従業員の傷病手当の費用(使用者が負担するため一般に傷病手当とは区別され、傷病賃金と呼ばれる)を負担することになった。使用者が傷病賃金を負担する期間については何度も制度変更が行われており、最近では14日間(1992年~96年、98年4月1日~2003年6月30日)、28日間(97年1月1日~98年3月31日)、21日間(2003年7月1日~)となっている。使用者負担引上げにより、96年までは傷病手当受給者は減少する傾向があった。なお、既に述べたように97年以降の増加は景気拡大と関連している。

使用者は、この傷病賃金の費用を削減するため、病気欠勤予防策を開始している。特に民間部門よりも病気欠勤者の多い市町村自治体の約10分の1が健康診断を実施しており、健康診断の実施を計画している市町村自治体は約25%に上る。市町村における長期欠勤者の割合は7.2%で、民間企業における4.9%よりもかなり高い。市町村自治体によれば、従業員に女性と中高年労働者の比率が高いことがその理由である。90年代末に、工業部門以外の職種である教師、看護師、社会保険事務所職員などの間で病気欠勤者が増え、多くの人が長期間欠勤するようになっている。

傷病手当受給日数(単位:千日)
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
男性 24,018 21,389 19,397 22,906 27,954 33,305 38,068
女性 32,787 29,905 28,176 35,162 44,230 55,004 64,366
合計 56,805 51,294 47,573 58,068 72,184 88,309 102,434

出所:Statistical Yearbook of Sweden 2003

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