2003年度 OECD雇用・大臣会合が開催される

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年12月

2003年9月29日から30日にかけて、OECD加盟各国の雇用・労働担当大臣がパリに参集し、OECD各国に共通する雇用課題の現状の検討と今後の雇用政策のあり方について議論を交わした。日本からは、谷畑 孝厚生労働副大臣が代表として出席した。

会合1日目

会合1日目の9月29日には、「良い仕事/悪い仕事:神話と現実?」というテーマでフォーラムが開催された。ここでは、主に「雇用の不安定性や低賃金問題、その他の労働の質に関する問題は、さらなる雇用創出によって徐々に消滅していくのか? もしそうでない場合、政策はどのように労働の質に関する問題に取り組んでいけばよいのか?」といった課題設定に対する討議が行われた。このフォーラムには、経済産業界諮問委員会(BIAC:Business and Industry Advisory Committee)や労働組合諮問委員会(TUAC: Trade Unions Advisory Committee)など、OECDの労使双方の諮問委員会の代表者も参加し、フォーラム終了後には、各国大臣と懇談を行い、労使それぞれの立場から意見を述べた。

会合2日目

会合2日目の9月30日には、前日の議論を踏まえたうえで、「雇用の増加と質の向上」をテーマとした雇用・労働大臣会合が行われた。会合に先立ち、各国の大臣に向けて配布されたディスカッションペーパーには、主な雇用問題の論点とOECDによる分析コメントが書かれており、次の2点に問題の焦点が絞られていた。第1点目は、「社会において少数派であり、不遇な集団の人々の雇用をいかに保障するか」である。そして第2点目は、「いかに前述の人々や他の労働者のキャリアアップの道を図り、技能改善を進めるか」という点である。会合は、この2つの課題を中心に進められ、そこで話し合われた主要論点と評価は以下のとおりである。

  1. 今後は、低雇用割合のグループをターゲットにした雇用政策に重点を置くべきである。
  2. 高齢化社会のなかで、社会保障システム維持のためには、高齢者の労働市場への参加がさらに重要となってくる。
  3. 労働市場におけるジェンダー平等の促進は不可欠な構成要素であり、一部の国では非正規雇用から正規雇用への移行を促進するための政策が重要となってくる。
  4. 今後はより多くの「良い」雇用のための包括的な戦略が必要である。(例:職業紹介制度や税・給付制度の改革、生涯学習の促進、ミスマッチの解消と技能改善、資本市場改革との連携等に関する政策)
  5. 雇用プログラムの費用対効果を高めるための厳格な政策評価は重要であり、良い実施政策例の普及もOECDの今後の優先事項である。

会合の結果、今後OECDに期待される活動内容

会合の結果、今後のOECDの活動に対して以下の要請が出された。

  1. OECD雇用戦略勧告の再評価

    OECD雇用戦略プロジェクトが、1992年の閣僚理事会の雇用失業研究よりスタートし、94年に「雇用失業研究(Job Study)―提言:雇用戦略(Jobs Strategy)」として報告されてから約10年が経過した。今後は2年間かけて雇用労働社会問題委員会(ELSAC:Employment, Labour and Social Affairs Committee)と経済政策委員会(EPC:Economic Policy Committee)が緊密な連携をとりながら、過去10年間の経験と構造的人口構成の変化によって提起された新たな課題の観点から再評価を行う必要がある。

  2. OECDによる細かいテーマ別のさらなる調査と分析

    十分な情報が入手可能であるという条件で、OECDは以下の分野のさらなる調査・分析を行う必要がある。

    • 雇用の質と生産性、および経済成長との因果関係の各国の横断的分析
    • 人的資源形成が雇用とキャリア展望に与える影響に関する分析
    • 労働に関する移民についての経験とて展望の調査
    • 外国の直接投資のパターン変化が労働市場に与える影響の調査と分析

今回の雇用会合では、OECD加盟各国の雇用・労働大臣が、過去10年間のOECD雇用戦略に関する一定の認識と評価を行い、またさらなる活動目標を採択した点で意義は大きい。そのなかには、過去に失業率を下げ、若年者の労働市場への参入を促進するために早期退職を奨励するという近視眼的な政策がとられたことに対する反省と、OECD雇用戦略の勧告に従って実行された他の改革が雇用パフォーマンスの改善や構造改革の改善につながったことに対する評価が含まれている。

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