国営航空機製造会社 ディルガンタラ・インドネシアにおける労使紛争

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2003年12月

7月11日、資金難を理由に従業員9600人余りの一時帰休を発表したディルガンタラ・インドネシア社(詳しい経緯は2003年10月インドネシア労働情報参照)。その後、8月中旬に組織再編策が発表されたが、従業員6000人の解雇策が含まれていたことから、労使紛争が膠着状態に陥り、9月には従業員数千人規模のデモ活動にまで発展した。

ディルガンタラ・インドネシア社の銀行再編庁(BPPN)に対する債務は3兆1700億ルピアとなっており、財務省などへの債務も合計すると4兆1500億ルピアに上るとされている。毎月の人件費に350億ルピアかかっており、その削減のため7月11日全従業員に一時帰休が通告された。

これに対し従業員側は、事前の労使協議がないものであり、2003年13号労働法にのっとった措置ではないとして、バンドゥン行政裁判所に提訴した。

8月18日には同社によって再編策が発表されたが、その内容は従業員6000人の解雇と、BPPN債務1兆7700億ルピア、財務省債務1兆700億ルピアを株式転換するという債務処理策の2本柱からなるものであった。

一方で同社への製品の発注話が上がっており、財務体質の改善につながるとの見方もある。マレーシア空軍とパキスタンから輸送機CN-235型機の受注、ブリティッシュエアロスペースからエアバスA380向け部品の受注、ロシア製戦闘機スホイの部品製造受注、その他タイやブルネイ、リビアや中国からの受注も予定されている。

だが、労使の話し合いは膠着状態に陥った。従業員6000人の解雇案には反発の声が上がり、9月3日には従業員約5000人が退職金見直しなどを求めるデモ行進を行った。西ジャワ州バンドゥンの本社からバスや自家用車に乗って、ジャカルタへ向かってデモ行進し、ジャカルタでは国会副議長や国営企業担当相、同社の筆頭株主であるBPPNのシャフリマン長官らと面談して、従業員一時帰休措置の撤廃や同社に関する汚職の解明を要請する活動を行った。従業員やその家族によるデモは9月30日にも前回を上回る規模で行われた。

経営者側の譲歩

解雇者数を減らすという形で経営者側の譲歩も見られた。従業員再雇用のための試験を9月23日から10月3日にかけて実施し、この試験を5057人が受験、4957人がパスした。こうした動きの結果、いったん解雇と発表された6000人のうち、3400人は職場復帰可能な見通しが出てきている。受験に応じなかった約4000人の従業員に関しては月給の13倍に相当する退職金を支払う措置を検討しており、試験に合格しながら3400人枠に入ることのできなかった従業員に関しては別会社への異動の措置をとる予定。

8月4日から進められていたバンドゥン行政裁判所における審理は、10月7日に判決が下され、7月11日の同社による全従業員一時帰休措置は無効だとして、従業員側の訴えを認めた。

労使紛争解決手段としての軍や警察

9月にインドネシアで起きたこのディルガンタラ社やKPC社におけるストと関連して、最近のインドネシアにおける労使紛争とその解決手段としての軍や警察について触れる。

ディルガンタラ社では7月11日の一時帰休発表直後から、空軍の特殊部隊が事業所を閉鎖するために配備され、その後の従業員のデモ活動を監視する任務にも特殊部隊が投入された。この際、従業員と兵士の間でトラブルも生じた模様である。

労使紛争を警察へ訴えるケースも見られる。9月10日、バタムにあるブキトゥム・ティララ・ホテルの従業員10数人が解雇手当を求める訴えを警察に。9月24日にも、インドネシア・エアライン社の従業員数人が給与不払いを警察に告発している。

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