就労希望の外国人にインドネシア語の試験の義務化を検討

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2003年12月

インドネシア人の雇用確保と労使紛争の解決のため、ヤコブ労移相は、近く成立予定の新投資法に、国内で働く外国人労働者に対してインドネシア語の試験を義務づけることを検討していることを明らかにした。これに対し、投資の減退を懸念する経営者や投資家の声も上がっている。

インドネシア語試験はコミュニケーション向上に一役

2003年は投資の年、とのスローガンを掲げ新投資法の成立に向けて準備してきた政府であるが、2003年10月現在において、法案もまだ国会に提出されていない状況である。そのため年内での成立は困難と見られているが、政府側は2005年までには新投資法案をまとめ、国会で成立させることにより、外資を積極的に呼び込む方針であることを明らかにした。

国会で労働問題を取り扱う国会第7委員会(健康、人口、労働問題担当)の発表によると、現在インドネシア国内に滞在するとされる約3万人の雇用は、今後技術分野など特殊な分野に限り、それ以外はインドネシア人の雇用を最優先するとされている。つまり、今回発表されたインドネシア語試験の実施によって、外国人就労者を「足切り」目的に利用するという意図も含んでいる、という見方もある。

具体的には、今後各国のインドネシア大使館において、インドネシア語の試験(UKBI)が実施される(内容に関してはインドネシア語技能検定試験新しいウィンドウのサイトで参照できる)。在インドネシアの支店や支社などに派遣が決まった日本人職員は、大使館にてUKBIを受験し、ある一定の点数を取得できなかった場合は、着任後政府の提供する語学クラスに参加することが期待される。水準の点数に満たなかった者が入国拒否されることはない、と大臣は述べている。教育省国立言語センターの部長、デンディ・スゴノ氏によると、インドネシア語を話せない外国人労働者はインドネシア人とコミュニケーションをするうえで障害があると指摘し、職場、職種に応じた言語能力が必要であるとしている。

日本人の反応――テスト実施のメリット・デメリット

UKBIは、1998年から国立大学を受験する学生が全員受験を義務づけられたインドネシア語のテストで、多数の言語と民族から構成される同国にとっては、公用語の能力を図る1つの基準となっている。テストの点数は150~900点となっており(TOEFL同様に、1問も正解がなくても0点にはならない)、何点を基準とするかは未定である。今回のような語学試験の社会人への適用は、1988年ごろから何度か議論には上っていたということである。

現在インドネシアにはジャカルタやバタム工業地域を中心に日本人が多く滞在している。テスト義務化の発表に対してJETROの関係者は、労使紛争などの解決に役立つこともあると考えられるが、試験を法律で義務化することに関しては疑問であると答えている。

このテストの義務化によって、現地の駐在員がインドネシア語を理解できるようになった場合、従来よりも現地の労働者とのコミュニケーションが容易になると考えられ、多発する労使紛争を減らすことができるかもしれない。しかし、現実的には、現地滞在は3~5年という短い任期がほとんどなので、意思疎通ができるまでの水準に達せずに、その任期を終えてしまうケースも多いと見られる。また、近年急激に減少している海外からの直接投資が、このテストの実施によりさらに落ち込むのではないかと危惧する声もあがっている。

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