鉱山会社のKPC、長引くストライキ
年間1600万トンの良質な石炭の生産・輸出を行い、年間4億5000万米ドルの売り上げを誇る東カリマンタンの鉱山会社カルティム・プリマ・コール(KPC)社において、労組が株売却益に伴う賞与支給を経営側に求めストライキを行った。ストは8月29日から始まり、石炭生産が停止した。9月17日には労使交渉が妥結し、操業再開される見通しが立ったが、賞与の支払い方法などをめぐり再び紛糾。ストが1カ月以上続いた場合、政府損失は300万米ドルにも上るといわれている。
ストの経緯
KPC社は、イギリス系エネルギー資源大手のBP社と、イギリス・オーストラリア系のリオ・ティント社がその株式を保有していたが、8月に株式の一部を地元企業であるPTブミ・リソーシズ社に売却することを決定。労組は、その売却利益の15%(約7500万米ドル)を従業員全員の賞与として分配することを求め使用者側と交渉を行っていた。KPCの広報担当者によると、使用者側は賞与の支払いには合意したものの、要求額が高すぎるとして交渉は決裂、8月29日から労組がストに突入したと説明している。
ストを行っているのは同社の2700人の従業員のうち約2000人で、1日当たり4000~5000トンの石炭生産を行っていた同社は生産の停止が大きな痛手となっている。生産停止によって、同社は1日当たり50万米ドルが損失を生じた。また、政府も同社から石炭販売額のうち13.5%を配分として受け取っているため、政府の損失は1日当たり約7万米ドル(ストが1カ月続いた場合の損失は約300万米ドル)に上ると見られている。
スト後の同社と労組の交渉
生産が停止してから2週間後の9月10日、KPCは取引先との損害賠償問題を回避するため、「不可抗力」宣言を行い、台湾や香港、日本などの取引先へ発送が不可能であることを通知したとみられている。
その後、東クタイ県議会の仲介で、労使間との三者協議が9月16日に行われ、KPが従業員に総額600万米ドルに上る賞与を支給することで合意に達した。その内容は、
- 勤続年数×200万ルピア(注1)、
- 勤続年数10年以内の従業員は基本給2カ月分、10年以上の従業員は3カ月分の賞与、
のどちらかを選択することであった。賞与の支給は、10月10日の株式の売却後となっている。
この三者協議により、協議合意後の9月17日から同社の操業が再開されるとみられていたが、実際には賞与以外の点でも労使間で協議している点があり、その問題が解決せず、10月14日に労使の話し合いが再開されたが、合意には至っていない模様である。
行政の反応
労使交渉がこうした膠着状態に陥った原因は労働側にもあると見られている。労働組合出身であるヤコブ労働・移住大臣も、9月中旬になって、このストライキは違法であり、職場に戻ることをこれ以上拒み続けた場合は、経営側が解雇することを支持するというコメントを出した。
石炭を含む天然エネルギー産業は、インドネシアの最大の外貨獲得産業である。政府はこの部門での大手であるKPCのストライキによって、外国資本企業の投資に悪影響が及ぶのではないかと懸念している。
注
- 100ルピア≒1.45円。2003年11月現在
2003年12月 インドネシアの記事一覧
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