2003年労働争議:争議の性格は変化したが、その商業的損失は今も大きい

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年12月

英国の労使関係は変化しつつあるが、経済にとっても、職場にとっても、その潜在的な意味は大きい。企業、ひいては一国の経済にとって、労働力、すなわち人間は極めて本質的な意味を持っている。

実際、2003年夏、ある一流民間企業において、男性労働者を中心とした従来型の賃金闘争ではなく、女性のホワイトカラーを中心としたより進歩的な闘争が起きた。英国航空(BA)では、チェックイン・カウンターの従業員に対し、彼女たちの職場における柔軟性を脅かす新たな就労形態の導入が示されたが、チェックイン・カウンターの従業員はそれに抵抗し、無計画とはいえ、会社側の判断に影響を及ぼすことに成功した。

以上が2003年夏、イギリスを揺るがした労働争議の背景である。かつて世界で最も人気の高い航空会社の1つとうたわれたBAの首脳部は、いわゆる「経営者の経営する権利(management’s right to manage)」を行使し、一方的に労働慣行の刷新を発表した。しかし、顧客がまさに夏休みの旅行計画を立てようとしている最中の発表はタイミングも悪く、効率性向上の名の下にスワープカード(電子タイムカード)を導入しようとする計画は、大きな抵抗を前に延期を余儀なくされた。

伝統的な労働争議は過去20年間、大きく変化したものの、疎外された労働者の相対的な力は今も健在である。しかも、広範な労使関係法も今回の争議を抑止するほどの力はなかったようだ。いわゆる「山猫」型の自然発生的な労働力の撤退は、BAに損害をもたらすのに十分な威力を持っていた。BA側は、急きょ、要求どおりの譲歩を行い、労働争議の早期収拾に努めた。

今回の労働争議にかかわったTGWU、GMB、Amicusは、民間部門の争議に勝利したということになる。その過程でBAは約5000万ポンドの損害を被り、そのうえ、社名に傷を負った。また、スワープカードの導入は秋まで延期された。今回の争議は、労働組合が民間部門において生き残ることができるかどうかという問に対する1つの答えといえるだろう。一般に現代の民間企業はかつてに比べ、大幅に規模を縮小しており、しかも、いわゆる「人的資源管理(Human Resource Management)」が従来型の労務管理(労使関係)に取って代わっている。それでも、問題はなお存続している。

これらの民間企業における労使関係は、いわゆる「脅威効果threat effect」によって特徴づけられる。つまり、従業員の組織化をあらかじめ防ぐために、企業が、組織化された労働者と同等以上の条件を自社従業員に提供しようとする傾向が見られる。民間部門における労組の数は減少しつつあるが、その数的規模を超える影響力を有している。今回のBAにおける争議は、労組の果たす役割に質的な変化が見られるとはいえ、今もなお、組織された労働が公共・民間を問わず本質的な役割を果たしていることを示している。

諸々の改革にもかかわらず、すべての従業員/労働者は大きな力を保持している。なぜなら、労働者が提供するサービスを購入する者はなんらかの形で労働者に「依存している」側面があるからだ。しかし、いかにしてそうなのかが問題である。建設的かつ協調的な環境においてこそ、人は最善の仕事をする。BAのケース、そして多少度合いは低いが、現在始まりつつある郵便のケースでも、新しい形の争議が展開している。どちらも、うまく対処しなければ、重大な損害やさらに大きな争議に発展する可能性がある。このことから、どの経済においても、労使関係は効果的な経済パフォーマンスの1要因であり続けるだろう。

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