政府は労働時間短縮で雇用拡大を検討

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  • 国別労働トピック:2003年12月

ギード・マンテガ企画相は、ルイス・イナシオ・ルーラ大統領が、任期中に1000万人の新規雇用をつくると発表していた選挙公約を履行するために、労働時間を短縮して、生産に必要な労働力を雇用数増加で補う手段の採用案を、国会に提案する意向を発表した。企画相の説明では、憲法は週44時間労働を規定しているが、労使団体による協議によって労働時間は短縮できることを認めている。労働党と中央労組は、給料水準は下げないで労働時間のみを短縮することが雇用増加をもたらすと、過去にも繰り返して主張してきたが、今回も同じ考えであり、経済活動冷え込みと市場競争に追われている企業が、給料を据え置きながら労働時間を短縮する政府案に、正面から反対することが予想される。

ジャッケス・ワグネル労相は政府の労働時間短縮案について、「政府の労働時間短縮提案は、2000年7月に労働法、組合法改正協議のために政府が制定した国家フォーラムによって、事前に討議される」と付け加えた。このフォーラムには労働者、企業家、政府代表が参加している。労働省では労働時間短縮案を2003年中にまとめて、2003年末か2004年初めに国会へ草案を送付したい意向を持っている。労働時間短縮に関する政府案の詳細は、フォーラムが政府に回答する内容次第になると、労相は説明した。

また、労働党政府が4年間の任期中に、1000万人の新雇用を創出すると公式に発表していることについて、労相は「1000万人という数字は、2003~2006年度に実施する政府の多年度計画を立案した企画省が出した数字で、労働省が出した数字ではない。1000万の新雇用をつくるには、GDPが年間5%の成長を維持し、さらに非公式就労の増加まで加算しないと達成できない数字だ」と、現実的な見方を発表した。政府の多年度計画には、2004年のGDP成長を3.5%、2005年は4%、ルーラ大統領の任期最後の年となる2005年でも4.%の成長を予想しているにすぎない。

労相はまた、労働法、組合法を改正しても労働市場拡大にはつながらない、改正が即雇用拡大になるような幻想を持ってはならない、雇用拡大とは経済成長でのみ達成できるものだ、と話した。現行法は正式雇用の給料支払いに過重な負担金がかかる規定となっているために、柔軟性を持たせる形に法規を改正すれば非合法就労を減らすことには貢献する、と意見を述べた。

なお、大統領が労働時間短縮案を提起すると同時に、企業家の間では、企業経営を維持するには労働時間短縮に同調する給料引き下げが必要である、と反対を発表した。労働者側は、給料を下げないで労働時間を短縮することが新たな雇用を生むと強調しており、フォーラム開始以前から労使両団体の意見対立が予想される。

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