職場関係省が職場関係法の厳格な順守や個別契約導入を求める

カテゴリー:労使関係

オーストラリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年12月

アボット職場関係省長官は、労働組合の影響力低減を目的として、様々な方策を利用している。

アボット職場関係省長官は、建設業に対して、全国建設規則を厳格に守ることを求めた。同規則は、6年前から存在していたが、実際にはほとんど実施されていなかった。規則は、連邦政府建築工事契約の入札にかかわる条件を定め、なかでも職場関係法のクローズド・ショップ禁止規定に反するような協定を労組と結んでいる使用者は、連邦政府契約の締結が認められないとされている。この分野の政府予算は年間およそ50億豪ドルに達し、規則に従っていない使用者に与える影響は計り知れない。加えて、同規則は長官の裁量にゆだねられる部分が大きく、問題であると指摘されている。

こうした動きに対しては労組だけでなく、多くの使用者が懸念を表明している。というのは、建設業では労組によるパターン・バーゲニングを通じ統一的な労働条件基準が設定されている。これにより、労働条件引き下げによる競争は不可能となった。多くの大企業はこれだけでなく、クローズド・ショップ協定をも受け入れてきた。小規模企業の場合も、これらを受容してきたが、ただ常に労働条件削減の機会を窺っている。そのため使用者団体は、統一的な労働条件基準設定圧力がなくなれば、同業界が混乱に陥ると認めている。しかし、アボット長官は、労使関係法には関係なく同業界の規則を独力で変更しようとしている。

さらに、長官と連邦政府は、高等教育産業や製造業等でも同様の戦略をとっている。高等教育産業については、連邦政府が高等教育改革案を提示し、そのなかで大学教官への個別契約提示を条件に連邦政府基金を拠出することを明らかにした。これは、全国高等教育組合(NTEU)の影響力低下を目的としている。

製造業に関しては、長官は主要自動車組立業者にあてて、その労使関係を批判する文書を送付した。また労使関係委員会による職場復帰命令に従わない労組に対し、法的措置も辞さない方針を示している。

2003年12月 オーストラリアの記事一覧

関連情報