労使紛争解決法の成立は急務、労相P4への調停を避けるよう指示

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  • 国別労働トピック:2003年11月

労使紛争が発生した際の仲介機関としては、地方労使紛争解決委員会(P4D)や中央労使紛争解決委員会(P4P)があるが、近年の労使紛争の増加に伴い、解決までに時間がかかりすぎるという問題が発生している。また、委員会内部での不透明な動きが政府側で問題となっており、ヤコブ労相も新法案の成立を待ちつつ、できるだけ外部の仲介に依存しないで労使問題の解決を図るよう、呼びかけている。

まずは労使間で十分な話し合いの機会を

現在、労使紛争の解決を上記のような委員会ではなく、労働裁判所で行うことを定めた「労働紛争解決法案」が国会で審議されている。この法案は2003年4月に成立を予定していたが、内容に関して各方面から問題点が挙げられ、現在も審議は難航していると伝えられている。先に成立した新労働法(旧労働者保護法案)2003年第13号に続いて、新しい制度が盛り込まれることが期待されている。

ヤコブ労相は8月11日の「ジャカルタポスト」紙のインタビューに答え、P4DやP4Pの汚職問題や、問題解決への時間がかかりすぎるなどの点が問題となっていることを指摘した。汚職に関しては、使用者側からのリベートを委員会のメンバーが受け取り、使用者に有利な仲介を行っているケースもあるといわれている。解決に要する時間は、近年延びてきており、最大で6年を要した事例もあったという。

そのため労相は、労働紛争解決法案が成立するまでは、できるだけ日常的な労使間のコミュニケーションを図り、関係を安定的に保つ努力を心がけ、それでも労使紛争になった場合には、すぐに委員会に仲介を依頼するのではなく、できるだけ労使間で話し合いを詰めてから、外部機関を介すほうが望ましいと述べている。

そして労働者側にも、すぐにストやデモに訴えるという従来のインドネシアの労働者の行動を改め、まずは話し合いの場に参加することから始めるように指示している。

労働紛争解決法案

新しい労働紛争解決法案では、労使交渉が40日以内に合意に達しなかった場合、仲裁者を利用、仲裁が成立しなければ、新設される労働裁判所に持ち込まれ、50営業日以内に判決が下る、という流れ。紛争は115日以内に解決させることが打ち出されており、紛争処理期間の短期化が期待されている。

労働裁判所での仲介では3者構成の代表者が立ち会うことになるが、労働者の代表として最大数の組合員数を誇るKSPSI(全インドネシア労働者連盟)やSBSI(インドネシア福祉労働者組合)などといった大きな組織から人選されることについての批判も挙がっている。現在インドネシアでは70近くの労組が存在しており、すべての労組の意向をくむことは大変困難な状況となっている。

法案、2003年9月末での成立ならず

同法案は、現地紙などでの報道によると9月23日の国会での可決が予想されていたが、この日の成立には至らなかった。

その要因として、上記に挙げたような労組側の不満や、ストライキの手順やその解決方法が労働者寄りとする使用者側の不満が衝突し、最終的に妥協策が見出せなかったことが挙げられる。これにより、同法案の成立は2003年4月の成立見込みから大幅に遅れると見られている。

  1. スハルト政権時代の改正労働法を代替するため、1.労働組合法(2000年8月成立)、2.労働者保護法(2003年2月成立、その後労働法と改名)、3.労働争議解決法案(審議中)の3つの成立が見込まれている。

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