ホーチミン市近郊への出稼ぎ労働者に必要な支援とは

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年10月

ホーチミン市、ビンズオン省、ドンナイ省など、工業が盛んな南部地域に出稼ぎをしている労働者の多くは、北部あるいは中部地域の農村部出身者である。これらの農村部出身の労働者が占める比率は、ビンズオン省の工業団地では過半数、ドンナイ省では7割を超す。国会社会問題委員会は、ビンズオン省で2003年7月1日に、出稼ぎ労働者支援策についてセミナーを開催した。

経済・経営が国際化するなかで、外国投資企業は、各国の事業環境の変化に対応して、工場を別の国に移転する場合がある。ベトナムの投資先としての魅力を高めるためには、労働コストの低さだけではなく、出稼ぎ労働者の能力向上を進めることが必要である。外国投資企業に過度に依存しない産業構造を築くうえで、農業部門から工業部門への労働力の移動を円滑かつ効果的に進め、裾野の広い産業群を育成することは、重要な政策課題になっている。

同セミナーにおいて、国会の社会問題委員会は、工場付近のスラム地区の寮に暮らしている大部分の出稼ぎ労働者に対し、住居と訓練機会を与えることが急務であると報告した。ホーチミン市のベトナム労働総同盟は、工業団地と輸出加工区で雇用されている6万人以上の出稼ぎ労働者に対し、住居を確保することが必要であるとしている。ホーチミン市人民委員会のレ・ミン・ニュト副委員長も、同市内に現在建設中の多くのアパートは家賃が高すぎるため、労働者はより安い賃貸物件を探していると指摘し、労働者が賃借できるような安価な住宅を建設する必要があると提言した。

ホーチミン市人民委員会は、2003年7月下旬現在、2005年までに新たに7万人を収容する住宅を建設する目標を立てている。なかでも、低所得労働者向けの住宅建設が重視されている。ホーチミン市は、工業団地に対し、労働者が利用できる公的施設や住宅の建設を義務づける等の住宅供給を促進するための規制を導入しつつある。多くの従業員を雇用している使用者については、従業員の住居を提供する責任を負わせる規制の導入も検討している。同市は、また従業員対象の住宅建設を行うデベロッパーに対する低利融資など、様々な制度の活用を検討している。

国会の社会問題委員会によれば、出稼ぎ労働者は勤労意欲が高く、仕事を選ぶ際に、えり好みをすることが少ない。その反面、労働者としての権利を確保することは、出稼ぎ労働者にとって容易ではなく、国が社会保険に関する規制を強化するように期待が寄せられている。ホーチミン市労働総同盟(HFL)マイ・ドゥック・チン副委員長によれば、ホーチミン市で雇用されている6万人近くの出稼ぎ労働者のうち半数以上が社会保険を得ていない。同副委員長によれば、出稼ぎ労働者の大部分が、職務を遂行するためにより多くの職業訓練機会を得たいと希望している。最近のHFLの調査によると、出稼ぎ労働者の75%が19~39歳で、過半数は、教育を十分に受けておらず、訓練を受ける機会が少ない女性である。ビンズオン省文化社会問題委員会のマイ・チ・ズン委員長は、教育を十分に受けていない労働者は、使用者による権利の侵害に遭っても、仕事を失うことを恐れて抵抗しないことが多いと述べた。

社内で行われる職業訓練を補完するため、職業訓練総局は、工業団地、輸出加工区に職業訓練校を増設し、国際機関と協力して農村部の農民を対象にした訓練を拡充する計画を立てている。

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