テレフォニカ・グループにおける大量人員整理

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2003年10月

スペイン通信最大手のテレフォニカ・グループ(旧国営企業)は、6月18日、固定電話部門で大幅な雇用調整を行う意向であることを労組側に伝えた。

テレフォニカの労働者数は、民営化前の1995年は7万6000人を数えた。民営化後、ビリャロンガ前会長時代に1万人余の人員削減が行われたが(うち約7700人が早期退職)、今回のものは2000年に就任したアリエルタ現会長の下での初めての人員調整である。

6月24日、会社側は労働省に雇用調整処理手続きを提出し、労組側に対して雇用調整計画の内容を発表した。それによると、雇用調整の規模は予想を大きく上回り、固定電話部門の人員の37%、約1万5000人に影響が出る見通しである。計画は2段階に分かれており、まず最初の3年で1万人を整理、続く2年間で5000人の整理を行うことになっている。

テレフォニカ側はこのたびの人員調整の理由として、1998年の通信部門自由化以来の同部門における規制が新たに参入した競争相手各社を優遇する一方、テレフォニカにとって非常に不利なものであることによる部分が大きいとの説明を行っている。具体的には料金をめぐる厳しい規制を受けて料金50%引き下げという「宿題」を果たしたにもかかわらず、その見返りは何もなく、また他の通信会社のサービスを利用するようになった200万人の顧客に対しても最初の4カ月間はマーケティング活動を禁止されているのは、欧州の旧独占企業のなかでもテレフォニカが唯一であるとしている。一方、通信部門全企業からの拠出方式による電話回線網維持のための資金繰りが予定されているにもかかわらず、現時点ではテレフォニカのみが維持費を負担しており、そのコストが非常に大きいことも訴えている。

6月25日に始まった労組側との交渉において、会社側は雇用調整を強制でなく労働者の任意に基づいて行うとする点で、少なくとも2大労組の労働者総同盟(UGT)と労働者委員会(CC.OO.)と一致している。7月10日、雇用調整処理手続きで義務づけられている労組との交渉期間を経て、労使側は事前合意に達したが、それによると雇用調整は勤続年数15年以上に上る52歳以上の労働者を対象に希望退職を募り、会社側は61歳までは賃金の70%、その後65歳まで賃金の34%を支払うことになっている(61歳からはこれに加えて社会保障制度から早期退職年金を受給できる)。会社側の支払う解雇金総額は40億~45億ユーロに上ると見られる。雇用調整1年目の今年の希望退職者は10月15日を期限として募り、以後2007年までは毎年3月31日が締め切りとなる。また、会社側は退職者の10%に当たる1500人を新規雇用することも約束している。

テレフォニカの雇用調整は規模において突出しているが、スペインでは今年に入ってから大企業、中小企業を問わず雇用調整の波が押し寄せている。なかでも、近年見られた有期雇用の多用を主体とする雇用調整から、無期雇用労働者を直撃する集団解雇、早期退職といった形態にシフトしている点が特徴的である。この現象は通信、エレクトロニクス、電力、鉄道、自動車、金融部門等の大企業から、繊維部門の中小企業に至るまで広く見られる。理由としては、旧国営企業が独占してきた部門の自由化による競争の増大、大規模合併に伴う人員整理、通信・情報処理などの戦略的部門での雇用の後退等が挙げられる。このなかには、大銀行における大量早期退職のように会社側が全面的にコストを負担する例もあるが、多くはなんらかの形で国立雇用庁(INEM)からの手当支給に頼ったものであり、国の負担は決して小さくない。利益を出している企業がさらなるコスト削減のために雇用調整を行い、その「つけ」が国に回ってくることへの疑問もなきにしもあらずである。

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