「キャンペーン2003」の行方

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年10月

ビクトリア州の製造業関連労組(オーストラリア製造業労働者組合に代表される)は、同州の金属・製造業を対象に統一的な労働条件引き上げを求める「キャンペーン2003」を展開してきた。その主な要求は、

  1. 3年間に18%の賃上げ
  2. 週36時間制の導入
  3. 労組が管理する労働債権保護のための基金への拠出

である。

このキャンペーンはパターン・バーゲニングという新しい手法を用いているが、こうした手法が職場関係法により禁止されているため、その成否が注目されている。

労組による戦略は次のような形で展開されている。労組は同産業における企業別協約の満了時期を一致させ、企業別協約が同時期に満了を迎えるようにしている。これにより労組は産業規模の活動を実施できるのである。事実、1100あまりの企業別協約が2003年3月から6月にかけて満了を迎えた。

職場関係法では、協約満了から新協約締結までの間はストライキが適法とされている。したがって、協約満了期を同じにすることで、同一の要求を掲げた統一的な争議行為が可能となる。これがパターン・バーゲニングである。

自動車産業への影響

こうした活動は、ビクトリア州の製造業において最も重要な位置を占める自動車組立業にも及んでいる。自動車組立業ではジャスト・イン・タイム生産方式が導入され、労組はその弱点を突くような形で活動を展開している。ジャスト・イン・タイム生産方式は在庫をできるだけ抱えず、部品の定期的かつ頻繁な供給に依存している。そのため1つの小規模供給業者でのストライキが、メーカーの操業停止を引き起こすなど産業全体に劇的な影響をもたらしうるのである。これに対し、何社かの賢明なメーカーは部品供給が途絶えることを予想し、部品を蓄えるようになっている。

まず労組は、ブレーキ部品の供給を止めるためブレーキメーカーを対象とした活動を開始した。2003年6月26日にはFMPグループの数百人の労働者がストライキを実施した。これに対し会社側は東南アジアへの工場移転を示唆し、ロックアウトを行った。次に労組は最大規模のブレーキ部品供給業者であるPBR社と交渉を開始した。同社はフォード、GM、トヨタ、三菱といった主要な自動車メーカーに部品を供給していた。労組はカルソニック社との合意を基準に、PBR社との交渉に臨んだ。PBR社の回答はこれより低いものであったため、労組は7月15日に24時間ストを呼びかけ、さらに今後3カ月間に週1回のストを計画した。このことは主要メーカーの部品在庫を枯渇させる可能性があり、会社にとっては労組の要求を飲まなければならないという大きな圧力となっている。

7月14日には三菱自動車のアデレード工場が製造停止に追い込まれた。これはシートメーカーでの24時間ストにより、シートの在庫がなくなったためで、結局三菱自動車は12月に合意していた休業日を繰り上げることで対応した。つまり、7月14日の生産分を12月に生産することで調整したのである。

いずれにせよPBR社での争議行為が主要自動車メーカーにどのような影響を与えるのか、今後の動きが注目される。

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