海外派遣労働者増加のための規制強化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:雇用・失業問題労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2003年9月

ベトナムは5万人の海外労働者派遣を2003年の目標にしている。2003年年初から6カ月間で既に4万人以上が海外に派遣された。毎月、7000人以上の労働者を海外派遣しているが、5月にはSARSの影響で2000人にまで落ち込んだ。

労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)の海外派遣労働者情報提供センターによると、台湾にはベトナム人労働者が約2万5000人、マレーシアには同約1万4000人が、サービス、繊維、プラスティック、電機産業などで働いている。マレーシアにおける月給は、150ドル~250ドルに過ぎないが、労働条件や必要とされる技能が、ベトナムの地方労働者に相応しいため、労働者海外派遣会社にとって魅力的な市場になっている。一方、より高度な技能を持つ労働者は、日本や韓国で働くことを希望する。日本や韓国では、就労一年目には、月400ドル~500ドル、翌年からは月600ドル~800ドルを受け取る。韓国では1万7457人のベトナム人労働者が働いており、韓国建設業界は、さらに400人のベトナム労働者を採用する計画である。

MoLISAは、アジア以外の中東、アフリカ諸国にも労働者海外派遣を拡大しようとしている。最近、MoLISAはベトナム人労働者をイラクに派遣する計画を立てている。戦後復興のために外国の建設会社の下で働くことができるように、いくつかの労働者海外派遣会社は、イラク市場参入を試みている。アフリカでは、医療、教育、農業、建設産業などで高い需要が見込まれている。MoLISAによると、既にアフリカ諸国には、8000人以上の医療、教育、農業専門家が派遣されている。また、リビアには1万2000人以上の労働者が派遣されており、多くの建設労働者がアルジェリアに派遣されている。

ヨーロッパでは、労働者にとってフランスが魅力的な派遣先である。2002年に70名がフランスの食料加工会社に派遣されている。2003年は、これに加え、新たに70名が雇用される予定である。フランスで就労すると、賃金から出費を差し引いた後に、月平均650ドルを貯蓄することができる。

新政令で派遣会社への規制強化

MoLISAは最近、労働法に違反している労働者海外派遣会社への取締りを強化している。過去2年間に労働者をだました罪で20社の営業許可を抹消し、15社に警告を発した。
海外に派遣される労働者の資質向上が課題になっている。山岳地域の労働者を船員として派遣し、船酔いのために解雇されたり、職場から労働者が逃亡することがあるが、MoLISA海外労働管理局は、労働者海外派遣会社に対し、こうした山岳地域労働者の船員派遣を禁止する意向を示している。

同管理局は、派遣先から逃亡し不法就労している労働者を取り締まると発表した。同局によれば、韓国に派遣された労働者の約6%、台湾に派遣された労働者の約9%が本来の就労先で働いていない。今後、逃亡した労働者は、5年間出国を禁止され、損害を受けた者に対し、全ての出費を弁償するように義務づけられる。

さらに新たな政令により、原則として労働者海外派遣会社は、多くの支社を持つことを禁じられた。支社の数は最高2カ所に制限され、しかも、この2カ所は、同じ市内あるいは省内にあってはならない。この政令は派遣会社の市場支配力の制限を意図しており、労働者から高額の準備金を徴収したり、金をだまし取ったりすることを困難にする狙いがある。

派遣会社への規制強化のため、過去2年間、MoLISAは労働者海外派遣業務を行うための許可証を新たに発行しなかった。新政令では、労働者海外派遣を行うための条件が改められ、登記資本が50億ドル以上、労働者を職業訓練する機能を持ち、経済、法律、外国語の専門家少なくとも7人を揃えていることが必要とされる。派遣会社は、銀行に5億ドルを預金するように義務づけられる。新政令では、政治、社会的組織や株式会社が派遣業務を行うことも可能になり、派遣会社数は今後、拡大すると予想される。ベトナムの法律あるいは派遣先の法律に違反した地域や業務にベトナム人労働者を派遣した場合、派遣会社の許可証は取り消される。派遣会社は、罰金を3度課された場合や、営業許可を受けてから18カ月以内に100人以上を派遣していない場合には、解散させられる。営業許可証を既に得ている会社は、新政令が効力を発してから12カ月間は、旧許可証で営業できる。しかし、その後は、新たな基準による審査を受けなければならない。

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