30バーツ医療制度の諸問題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年9月

医療評議会(Medical Council)は、30バーツ医療制度により、多くの医師が長時間労働、簿給、緊縮財政を強いられ、辞職する原因になったと公認した。

一方、保健相は、30バーツ医療制度が施行された2001年4月よりかなり以前から、1000人近い医師が公共医療機関から去ることを強いられ、頭脳が流出したということを否定した。

様々な課題

国家経済社会開発局(NESDB)は、約950人の医師が辞職したと報じた。さらに医療評議会は、制度により制御しがたい支出が引き起こされたと指摘した。

医療評議会のソムサック氏は、NESDBがこの制度により多くの医師が公共機関から去ることになり、 支出面で多くの困難を強いられたと指摘されていることに対してこの点は正しいとした。また、同様の制度を取っている他の国においては、医療制度の発展のた めに予算の充当が強いられているとした。

ソムサック氏は、この制度により多くの患者が訪れることになったが、医師は臨時手当も支払われず、課徴な労働を強いられ、さらに多くの医師が医療ミスやそれによる訴訟を避けるために、患者を他の病院へ移転させている事実があるとしている。

医療評議会では、なぜこのように多くの医師が公立病院を辞めることになったのか、そしてそのことによる頭脳流出を避けるにはどうすれば良いかについて議論するセミナーを開催する予定である。

保健省のアナン氏によれば、公共医療機関で働く多くの医師は、よりそのスキルを向上させたいと考えているが、その地位に不安定感を感じているという。そこで、アナン氏は大学を修了し、働き続けたい医師には安定したポストを与えるべきだとした。

また、アナン氏は30バーツ医療制度における予算の問題は最初の数年で解消されるべきであり、ヘルスケア全般の改善により、この制度のコスト削減が図られなければならないと述べた。

予算面において、財務省は、30バーツ医療制度の維持に525億8000万バーツは不十分であり、2003年度末までにさらに42億バーツが必要であるとした。2004年度の予算は、550億バーツとされ、一人当たりの補助金は、1247バーツとされた。

政府はこうした多くの医師が辞職している事態の対応策を探っているところである。これに対し、タクシン首相は、頻繁に調整を行うことによりこうした状況は改善されるだろうと発言した。

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