貧困撲滅へ向けた取り組み

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年9月

国家経済社会開発局(NESDB)は、6年以内に貧困を撲滅する取り組みとして10個の目標を掲げた。

富裕層とのギャップ

NESDBによれば、貧困者数は、99年が990万人、2000年が890万人、2001年が820万人、 そして昨年が620万人となっている。このように、貧困者数は、減少してきており、タクシン首相は、地方振興基金、人民銀行、農家の債務繰り延べ、一村一品運動などの施策が効果をあげてきていると強調した。

しかし、貧困者すなわち貧困線以下(月額所得922バーツ未満)の人口は、約620万人で全人口の9.8%、国民所得では4.2%を占めており、15年前の4.5%よりも減少している。一方、国民の20%を占める富裕層は、15年前には、国民所得の54.2%を占めていたものが、56.2%に上昇した。

そこでタクシン首相は、貧困を6年以内に撲滅することを計画し、NESDBにOECD諸国の基準に準拠した公共福祉制度の確立を指示した。NESDBは、これを受け、貧困を撲滅すべく10個の目標を掲げた。

10個の目標

  1. 人々が皆12年間の基礎的な教育を受ける権利の確立
  2. 30バーツ医療制度を修正した普遍的なヘルスケア・プログラムの継続
  3. 資本へのアクセス
  4. 高齢者が年金を受ける権利
  5. 飢餓の撲滅及び学生のための食糧助成金
  6. 5リットルの飲料水及び1日当たり45リットルの清潔な水
  7. 電気の利用
  8. 住宅の提供
  9. 仕事やビジネスに関する情報にアクセスする権利
  10. 生活と財産の安全

目標達成に当たっての課題

しかし、NESDBは、これらの遠大な目標にかかるコストはどれぐらいになるのか試算できていないし、財源をどうするかについては未定であるとしている。

また、タイ開発研究所(TDRI)のエコノミストは、上記の目標には賛同するが、それを達成するためには、富裕層からの税収を上げなければならないと指摘している。しかし、「富裕層は富を共有する準備ができていない」と悲観的な見解を示した。

また、財務省は、政府が富裕層に対する財産、土地、相続税のような新しい課税制度を導入する試みに対応するのが遅いと指摘している。

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